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35にしおりをはさみました!
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35
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連れてこられたのは昨日の空き講義室だ
この講義室の空気はなんとなくほかと違う気がする
昨日あんなことをしたからだろうか
この部屋の空気がとても甘く感じる
一歩足を踏み入れるだけで昨日の事を鮮明に思い出してしまって頬が紅潮する
先生が足を組んで座った机はちょうど昨日の場所でわざとなのかと思ってしまう
俺も扉を閉めて先生のそばにある席に座る
「さあ、なにがあったか聞かせてもらおうか。昨日お前が帰ったあとだ。その傷はなんだ。右足も引きずってるな?歩き方を見るにあばらもヒビ入ってるだろ?誰にされた?」
「わっ、ま、まって」
1度にいくつもの質問を受けてしまい答えるに答えられない
「お前昨日までの威勢の良さはなんだったんだよ?そんなにビクビクしやがって」
父に久しぶりに殴られたせいで人の怖さを思い出してしまった。だから怖くて怖くて仕方がない
わざとじゃないんだろうけど先生は俺をキリ、と睨みつけてくる
「あっ、ごめんなさいごめんなさい…っ」
いつも通り決まったセリフ
たとえ許されなくてもこの言葉を言えば暴力は軽くなった
先生は殴らないとわかっているのにどうしても恐怖に煽られて謝罪してしまう
「なに謝ってんだよ、とりあえず聞かせろ。なにがあった?」
「…やっぱり言えないですよ…っ。こんなこと他人に言うべきじゃない」
「お前なぁ…」
先生は呆れ顔で俺を見る
おれは机に突っ伏して腕を枕にしてそこに顎を置き、目だけで先生を見て話しかける
「ねぇ、先生…。先生の名前って虎太狼って言うんでしょ?いいですよね、虎と狼って。強そうな名前。それに名字も花園…1人で観光スポットみたい」
「その言い方バカにしてるみたいだな」
「してませんよ、強そうって褒めてるじゃないですか。
…俺、自分の名前嫌いだ…こんな女みたいで弱そうな名前…。俺は逆らう勇気がほしい…っ」
父親に、家族に逆らう勇気
あの暗い空間から逃げ出す勇気がほしい
今はすごく情けない表情をしている気がして顔を伏せる
「…『瑠璃』ってな、石の名前なんだぜ?ラピスラズリって鉱石だ。しってるか?」
俺は小さく首を横にふる
「今の日本名は青金石っていうんだ。古くは瑠璃って呼ばれてた」
それがなんだというんだろう…
「綺麗な色だよ。
ラピスラズリってのはいろんな鉱石が混ざりあって出来た石だ
一般的には鮮やかで純粋な青色してるけど混ざり方によっては金とか黒とかの色が入る。
若干ひねくれてるお前らしい名前だと思うぞ?
お前に勇気なんて必要ないよ。誰よりも綺麗にあればいい」
先生の声は酷く優しくて俺の冷えきった心を溶かすように一文字一文字を丁寧に話す
それはまるで俺の心に届けって願いがかけられているようで、それに気付いた瞬間何故かとても泣きたくなった
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