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手紙にしおりをはさみました!
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手紙
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「ご主人様、弟様から手紙が届いております」
幾多もの部屋がある屋敷のその一室、アンティークの家具で落ち着いた雰囲気を醸し出す静かな書斎。
燕尾服に眼鏡のその男は冷たい声を添え、送られてきた封書を何一つ無駄のない動きで家の主へと渡した。
「またあいつか。いい加減しつこいというものだろう、今月はこれで何通目というんだ」
「5通目でございます」
若き主人はその封書をまじまじと見つめ、次第に眉間へシワを寄せていく。
ブラザーコンプレックス、それは兄弟に対する強い愛着や執着を抱くことである。
彼の弟もまた、そう呼ばれる人物の一人だ。
幼少期に周囲との接触を制限された中、兄弟という存在だけが唯一の友人であった。
後から生まれてきた者からすれば成長のほとんどを兄と共に過ごしたのだ、もしかするとそれは必然的だったのかもしれない。
しかし、それがただの兄弟愛に収まらないと知ったのは最近のことだ。
要するにこの手紙は、実の弟からの執着深いラブレターということになる。
その内容は主に、兄を自分の住む別邸へと誘うものであった。
「あいつはこれまでにどれほど手紙を寄越したんだ」
「24通となっております」
「こんなものを送ってくるようになって随分経ったな、一体いつからだったか」
「7ヶ月前からでございます」
主人の問いには完璧な答えを、それがこの屋敷一の完璧な執事としての役目だ。
「後で電話を頼んだ」
「かしこまりました」
完璧な執事によって完璧に整えられた完璧な書斎。
そこは静寂に包まれ、聞こえる声といえば主人と執事による会話のみである。
「ご主人様」
「なんだ?」
「そろそろ就寝の時間かと思われます」
「あぁ……そうだな。しかし今日はまだ少しここに用があるかな」
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