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311にしおりをはさみました!
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311
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「っ…な、にを…」
閉じ込められたんだ、というのは、考えるまでもなく理解できた。
けれども何故、こんな風に閉じ込められなければならないのかは分からない。
「先輩っ?」
俺は委員の仕事でここに連れてこられたのではなかったのか。
振り返って窺った先輩は、ニィッといやらしく唇の端を吊り上げていた。
「ふっ、約束通り連れてきたぜ」
「おぅ、サンキュ。ふぅん、これが噂のね」
「さすが、可愛い顔してんね」
ニヤニヤと、下卑た笑いを浮かべた男が数人、跳び箱やボールの入った籠の影から姿を現した。
「っ…」
制服のブレザーを着ているからには、うちの学校の生徒なんだろう。
見覚えなんかあるわけないけど、俺を連れてきた上級生との会話や様子から、この男たちも3年生なんだと分かる。
「っ、俺に、一体何の用ですか」
こんな場所に騙すように連れてきて、出口を閉ざして。
ロクな用事ではないことくらいは分かって、俺はジリジリと後退しながら、男たちを見回した。
「ふははっ、何の用かって、そりゃ、男好きのあんたにある用事なんて、1つっきゃないだろ」
「え…?」
男好き?
何の話なのか分からなくて、ギュッと眉が寄る。
「はっ、とぼけなくてもいいぜ。あんた、男のパトロンがいるんだろ?」
は?パトロン?
一体何の話だと、俺はますます混乱する。
「こいつがちゃんと夜の街で確認してるよ。あんたがパトロンと一緒にいるところ」
こいつ、と言って前に出された男に、俺は確かに見覚えがあった。
「あなたは…」
あの日、火宮に寿司屋に連れて行ってもらった帰り道に、街でうっかりぶつかってしまったあの男だ。
「確かにすげぇ高級そうな男と、ベタベタくっついて、甘えていたよな」
「それは…」
だって恋人だから…。
「すげぇよな。編入したてで、クラスメイトたちの前で、男のパトロンがいて、男とヤッてます、って宣言したんだろ?」
「はぁーっ?」
まさかこれって、俺が教室で暴露した、火宮のパートナー宣言が、曲がって歪んで尾ひれがついて、すっかり変わった噂になって広まっているってこと?
そりゃ確かに、ヤクザの会長と恋人、イコール、男と付き合っている、ということではあるけれど。
「他にも売りでも稼ぎまくってるんだろ?後は2年の不良の豊峰。あれもそのテクでタラし込んで絆したんだろ。生徒会の紫藤もな」
「そうそう。一匹狼のあいつらが、おまえとだけはつるみはじめたらしいじゃん?その可愛い顔で男を食いまくりってか」
「やるよなー。男の愛人やってるだけでもすげぇのに、まだ足りないって?そんなに突っ込まれるのが好きなら、俺らで可愛がってやろうかってな」
「なっ、違っ…」
どんだけ話が歪みまくって届いているのだ。
まったくの誤解に、フルフルと首を振って否定しようと口を開いた、その瞬間。
左右から伸びてきた男たちの手が腕に触れた。
「っ!」
本能的に身の危険を感じた俺は、反射的にパッとそれを振り払い、瞬間的に駆け出す。
けれど、別の男がサッと目の前に立ち塞がり、それ以上逃げ場がなくなった。
「っ、やっ…」
足を止めるしかなかった俺は、左右から伸びてきた男たちの手に、あまりにあっさりと捕まってしまう。
「離せっ…」
暴れても喚いても、人数と体格の差で、まったく抵抗にすらならない。
必死で身を捩り、足を踏ん張るのも虚しく、俺は、両腕を左右の男に掴まれ、ズルズルとマットの方まで戻されてしまった。
「っ、くそっ…」
どんなに抵抗しても、上級生の力には敵わない。
俺の身体はあまりに呆気なく、引きずり戻されたマットの上に、ドサッと放り捨てられた。
「っ…」
ブワッと上がった埃が目に入り、ジワリと涙が滲む。
「くっくっ、押さえておけよ」
男の1人が、俺の真ん前に立ち、マットに転がされた俺を見下ろす。
サッと動いた2人の男が、俺の両腕を左右に広げてマットに押さえつけた。
「やめっ…」
ジロジロと俺に注がれる、いくつもの視線を感じる。
っ…これ。
あの、会議室で感じた視線だ、と思った俺は、扉の方でこの光景を見ている、俺をここまで連れてきた先輩に目を向けた。
「っ、あなただったのか…」
なんで気づかなかったんだろう。
委員の仕事だなんて騙されて、ホイホイとついてきてしまったことが悔やまれる。
気持ちの悪い、嫌な視線には気づいていたのに。
敵意でも悪意でもないそれがまさか、こんな風に好色なもので、俺をどう誘い出そうかと目論んでいたものだっただなんて、まったく気づけなかった。
「っーー!離、せっ…離せよっ!誰かぁぁぁっ!」
かろうじて自由な両足をバタバタと跳ね上げ、声の限り精一杯叫ぶ。
うるさそうに目を細めた男が、ガッと俺の脇腹を蹴りつけた。
「うっ、ぐぁ…」
痛い…。苦しい…。
ジワリと生理的な涙が滲む。
「うるせぇよ。こんなところで叫んだところで、誰に届くわけもねぇだろ。黙ってろ」
「嫌っ、いやだっ。離せっ、火宮さっ…助けてっ、火宮さんっ!」
押さえつけられている両腕を振り解こうと力を込め、足を振り上げる。
バタバタと、全力で抵抗していたら、グシャリと上から右足を踏みつけられた。
「ったい!」
「うるせぇっつってんだろ?無駄な抵抗をしてねぇで、大人しくしろ。てめぇは無意味な叫び声じゃなくて、喘ぎ声だけ上げてりゃいいんだよ!」
グリグリと、踏まれた足に力を込められ、堪らず涙が溢れた。
「嫌っ、嫌、痛い。痛いっ、離して…」
「くくっ、いい顔するじゃねぇか」
ペロリと舌を出して、唇を舐めた男の顔にゾッと寒気がした。
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