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ハッピーショコラ!!! ■二粒目■にしおりをはさみました!
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BL Land「2014 Valentine」Tour{増刊特集}
ハッピーショコラ!!! ■二粒目■
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「店長?サイトリニューアルの件なんですけどぉ。見積もりが高いので、再検討依頼しておきましたぁ」
隣の部屋の壁にまで刺さるような甲高い声を発しながら、クロハラは調理場に現れた。
「事務室で待ってろ。お前が来るとチョコが溶ける気がする」
中肉中背で鼻筋の通った甘いマスクと良く通る声でも、職場では辛辣な言葉を吐き調理場の皆を凍り付かせる仕事の鬼、conte de fee の店長サガは、クロハラに鋭い視線をとばした。
「私、そんなに体温高くないですよぉ?」
店員兼事務員のクロハラはサガの辛辣な言葉にもめげない唯一無二の貴重な人材だ。
「嫌味が通じない人間は、神経がいかれてるか図太いのか…。お前は確実に後者だな」
またしても辛辣な言葉を投げつつ、サガは作業を中断し、手を洗い、見積を見直すためにクロハラと事務所へ向かった。
「上手くいかないな。彼のように、甘く少し可愛らしいイメージを出したいんだが…。オレンジピールをもう少し足して…ココアバターもあと10gは足すか。プリントは花柄にするか。いや、ピンクを使って蝶もいいな」
事務所につくなり、サガはメモを取りながら何やら呟き始めた。
どこまでも妄想を広げる彼に、すかさずクロハラが先刻彼から飛ばされてきた刺をはじき返す。
「店長ぉ?脳内ハーレム漏れて、暑ぐるしいですぅ。聞いちゃいけない一言も聞いてしまいましたよぉ?」
サガは眉間に皺を寄せ、クロハラを睨む。ニコニコと笑顔を絶やさないクロハラとの間で静かな火花を散らした。
「で、再検討とはどういう事だ?」
「それがぁ?、予算をものすごーくオーバーしてるんですよぉ。あ、これ見積りのコピーですぅ」
「確かに高いな」
「きっと素人だと思って舐めてるんですよぉ!」
「彼は、そんな事をする人間には見えないのだが…。それにしても、今日会えなかったのは残念だったな。彼は純白や桃色。薄い花びらが何枚も重なり合うような花が似合うな。コーネリアやクリーミーエデンのように小さく、しかし華麗に咲き誇り、周りには蝶が飛び交う。可愛いじゃないか!」
「メルヘンの世界から戻って来て下さぁい。暑ぐるしいって言ってるじゃないですかぁ。それに、見積を出したのはあのいかついおっさんだと思いますよぉ。あー、もーぉ。てんちょぉ戻ってきてくださぁーい」
クロハラの呼びかけも空しく、サガは先日会ったばかりの彼の姿を思い浮かべていた。
妄想の嵐は止まらず、二人の会話が再開されたのは一時間も後の事だった。
「薔薇細工と蝶のモチーフを使って、数量限定で売り出しにするか。ギフトラッピングにはローズピンク色の和紙と桔梗色のテープをカールさせておけば完璧じゃないか?」
クロハラの淹れた熱いお茶を啜りながら、バレンタイン用のラッピングの話を繰り出すサガ。
クロハラはサガの言葉に淡々と答える。
「サイトの話とかけ離れてますよぉ」
いつまでもキラキラと瞳を輝かせながら語るサガの姿を見て、クロハラは溜め息をつく。
***
結局、HPリニューアルの予算を大幅に増やす事で話がついた。
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