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憂鬱なクーベルチュール④にしおりをはさみました!
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BL Land「2014 Valentine」Tour{増刊特集}
憂鬱なクーベルチュール④
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片思いよりもつらい時間がこの時から始まった。
ひと目会いたい。そう思っても偶然に出くわす…ことは皆無。
朝練でもしてるのだろうか。登校も、昼休みに食堂に行ってみても、下校時はもちろんすれ違うことはない。
放課後のグラウンドをじっと見つめれば、なるほど確かにユニフォームの群れの中に小さく、他の連中よりはがっしりとはしておらず、ひょろ高い加賀美のシルエットだけは見つけることが出来た。
けれどクラブが終わるのを待ち伏せする勇気も出ない。仲間の誰かと一緒にいるかも知れないし、…何しろ僕のことなんて加賀美の眼中には入っていないのだから。
鳴らない携帯がその証明のような気がした。
そうやって一度怖くなると自分からはメールも電話も、出来ない。
せめてそれなら、サムライ加賀美でもいいから前みたいに毎日会いたい。
そんな風に思っても、一度も夢にすら現れない薄情な男。
こんなことならいっそ、嫌いになってしまいたい。
新しいクラスは楽しい。バカを言い合って、ふざけてじゃれて気ままに過ごして日が過ぎる。
去年が楽しくなかった訳ではない。ただ、ふんわりと浮き立ったり、苦しくなったり心が揺らめいていたのが今は凪いでいる。
決定的な別れの言葉があった訳ではない。
けれど、明らかな遮断。重ならない日常。
僕の片思いは、両思いになって消えてしまった。
それなら愛してるの一言なんて、聞きたくなかった。
そしてまた堂々巡りの、自問自答が続くのだ。
こんなことなら、片思いのままでいればよかった、と。
終業式なんて、嫌いだ。明日からは夏休み。
どうせ加賀美は予定など聞いてくることはないだろうと思ったから、みっちりとバイトを入れた。
くたくたに疲れたら何も考えなくて済む。
そう思って始めたファーストフードのバイトはもう3ヶ月目に入った。
「木崎君、笑顔が怖いよ」
「これが地顔ですぅ」
「そうかなあ、何だか張り詰めてるような感じがするけど。気楽に行かないとダメだよ~?」
同じシフトで仲良くなった先輩の指摘は何気にスルドイ。
お客さまへのスマイル。自分の持て余し気味な気持ちをごまかす為にも、誰に対してもスマイル、スマイル、スマイル。
愛想笑いが上手になればなる程、心の鎧は重さを増す。
夏の太陽の日差しを浴びても、溶けることのない窒息しそうな、それはチョコレートの檻。
何層にも何層にも重ねられ、純度の高いクーベルチュールは僕の心ごと頑なに日常世界から閉ざしていく。
加賀美に避けられてしまった今の僕には、…この世のどこにもいたい場所なんてない。
出来ればどこかに溶けて消えてなくなりたい。
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