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もう単位を取り終わって大学に用は無いけれど、ここの図書館は気に入ったから、今も通っている。
勉強の息抜きに写真集でも見ようかと探せば、海の写真集が目に入る。
つい手にとって眺めれば、綺麗な朝焼けの海があった。
「へえ、やっぱりあの景色気に入ったんだな」
「!?」
声に驚いて振り返って後悔する。
忘れたい男が、俺の目の前にいるからだ。
「ふっ。なんだよ、そんな驚いて」
「......っ。何でお前がここに!?」
つい大声を出してしまい、賢斗の指が俺の唇に重なる。
「しーっ。ちょっと場所変えようぜ」
たかが唇を触られただけで胸が痛い。
立ち尽くす俺の腕を賢斗が掴み連れてかれたのは、近くのカフェだった。
涼しい顔してコーヒーを注文した賢斗が、俺の方へ顔を向ける。
「今日鳴上さんは?」
「......家の仕事。後で迎えに来る」
「へえ」
ただ意味もなく睨めば、賢斗は苦笑を漏らす。
睨んでいなければ、心が落ち着かなかった。
「あの別荘行ったか?」
「一回も行ってない」
これは嘘だ。何度も行ったけど、賢斗は来なかった。
だから嘘をつく。
それを知ってか知らずか、賢斗は相変わらず困ったように笑うだけだった。
「.......そっか。良かった。俺も行かせてもらえなくてよ。お前が一人で待ってたらどうしようって思ってたんだ」
「......行ってないから、問題ない」
俺がそう言って顔をそらせば、賢斗はまた質問して来た。
「......鳴上さんと付き合ってるのか?」
そう聞かれて、胸がぎくりと跳ねた。
だって俺が鳴上と付き合っているのは、賢斗への裏切りだから。
賢斗は遅いと言えども、ちゃんと帰って来た。
この場合、事実となるのは俺が賢斗を裏切ったということだ。
けど俺の性格では、相手を責めることしかできない。
俺は自分しか守ろうとしない。
「......何だよ。俺のこと責めにきたのか?他の男のものになったから、責めてるのかよ!?」
「そういうわけじゃない」
「じゃあ何なんだよ!?」
俺はテーブルに手をついて立ち上がる。
他の客のことなんか、もう気にしていられなかった。
そんな俺の手に手を重ねた賢斗が、静かに俺を見つめて言う。
「取り戻しに来た」
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