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暴君の失態9にしおりをはさみました!
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暴君の失態9
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小鳥はアクアに連れられて、とあるショップに来ていた。
見渡す限りふわふわもこもこした可愛らしいもので埋め尽くされたこの店は、アクアの行きつけの服屋らしい。
小鳥の家出を発端に何故かパジャマパーティーをすることになり、アクアはここで新しいパジャマを買うとはりきっている。
「せっかくだから、ことりんも買おうねー!」
アクアの一存で、今回のパーティーはアニマルなパジャマの着用が義務ずけられた。
臣と美羅も乗り気で、それぞれ何らかの動物を意識したパジャマを持参してくる。
二人とは夜に合流の予定だ。
「じゃあ早速選ぼうか~」
そう言いつつ、アクアは小鳥の手を引きながら店内を素通りして、スタッフルームへと入って行く。
「勝手に入って大丈夫なのか?」
「知り合いのお店だから大丈夫だよ!ていうか、ここのオーナーさんは、ことりんも知ってる人だよー。」
「……?」
心当りがなくて首を傾げると、背後から思いきり逞しい腕に抱き締められた。
「小鳥ちゃん!いらっしゃーい!!」
「…薫?」
振り返って見えたのは、満面の笑みを浮かべた薫の顔。
「あたしも居るわよー!!」
「…翠?」
薫の背中に隠れていたらしい翠が小鳥の正面へと回り込み、 前からギュウギュウと抱きつかれた。
体格の良い二人に挟まれて少し苦しい。
「「アクアちゃんも、いらっしゃーい!」」
双子は小鳥から離れ、アクアも同じように二人がかりで抱き締めていた。
「…知り合いって、薫達のことだったのか。」
「そうだよー!スタイリストしながら、このブランド立ち上げたんだって!」
ネット通販で人気が出て、去年この一号店を開いたのだという説明を聞きながら、促されるままに奥へと進んでいく。
通された部屋には、お茶とお菓子と…大量の動物を模したパジャマが用意されていた。
「パジャマパーティーするってアクアちゃんから連絡もらって、いっぱいパジャマ揃えて待ってたのよー」
「レッツ着せ替えタイム~☆」
薫と翠は山盛りのパジャマを手に抱え、次々と小鳥とアクアの前に並べていく。
「ことりんことりんっ!どっちが可愛い??」
ピンクの兎の着ぐるみパジャマと、 白の兎のパジャマを胸元に当ててアクアが笑う。
とにかく兎のパジャマにすることだけは決めているようだ。
「どっちも可愛い。両方、試着してみたらどうだ?」
本当にどちらもとても似合いそうで、きっとアクアならどちらを着ても愛らしい。
それならば着心地で選ぶ方が良いだろうと、小鳥は試着を提案する。
「ありがとっ!そうするよー」
アクアが試着室へと消えると、薫と翠にお菓子を勧められ小鳥はソファーへと腰をおろした。
「小鳥ちゃん、尊と喧嘩したんですってね?」
カップに紅茶を注ぎながら薫に唐突に問いかけられ、小鳥はピシリと固まった。
「…どおして知ってるんだ?」
「今日仕事で尊と午前中一緒だったのよ。」
小鳥の疑問には、翠が答えてくれた。
「…尊、どんな様子だった?」
「「機嫌最悪。」」
双子の声が、綺麗に揃う。
「…悪い。」
「小鳥ちゃんが謝ることないわよ~。」
「そーよそーよ。悪いのは尊なんだから。」
薫と翠はそう言ってくれるが、機嫌を悪くさせている原因は小鳥なので、やはり申し訳ない気持ちになる。
「小鳥ちゃんが何に怒ってるのかは分からないけど、腹が立つことがあったなら、ガツンと尊に言ってやりなさいね。」
「溜め込まずに、とことん怒ってやればいいのよ。じゃなきゃ、あの暴君は分かりやしないんだから。」
思いきり喧嘩して、気がすんだらすっきり仲直りすれば良いと言って二人は笑う。
「……。」
小鳥が何も言えずにいると、隣に座った翠にどうしたの?と尋ねられる。
「…怒って、いいのか…分からないんだ。」
二人の言う通り、思っていることを吐き出して、きちんと尊とぶつかるのが和解への近道だとは思う。
けれど、今の小鳥にはそれがとても難しい。
「…怒る、資格があるのか、…分からない。」
ゆっくりと息を吐き出しながら、ポツリと呟いた。
小鳥は尊に手をだされた事に腹を立てているわけではない。
散々体を触られて、それをすっぽりと尊が忘れてしまっていた事には…最初は怒っていたが、今は気持ちは落ち着いている。
小鳥が今一番腹立たしく感じているのは、尊が自分以外の誰かと体を重ねる事に対してだ。
今までは仕方がないと受け入れられたそれが、昨日尊に兄ではなく一人の男として触れられた事で、許せなくなってしまった。
今の小鳥は、ヤキモチの塊みたいだ。
もう、他の誰とも肌を合わせて欲しくない。誰も抱かないで欲しい。小鳥にだけ、触れて欲しい。
それが、小鳥の素直な気持ちだ。
けれど、それを尊に伝えて良いのか・・・・・
やっぱり、言えない。言ってはいけない。言う、資格がない。
小鳥が代わりを出来るわけでもないのに、他の人間とセックスしないで欲しいなんて言えない。
それでは尊に我慢をさせてしまう。そんなのは、小鳥の我儘だ。
尊は、小鳥のものではないのだから。
出されていたクッキーを頬張りながら、ぐるぐると思考の渦にのまれていると、プニ、と翠に頬を摘ままれた。
「子供はそんな難しい事考えなくていーのよ!我慢しなくていーの。怒りたかったら怒ればいいし、言いたいことは何でもぶつけちゃいなさい!」
「…それじゃ、ただの我儘だ。」
頬から翠の指を外しながら反論すれば、今度は反対側から薫の手が伸びてきて、またしても頬を摘ままれる。
「尊にくらい、いくらでも我が儘言えばいいじゃない!小鳥ちゃんは子供で、尊は大人なんだから。小鳥ちゃんの我が儘くらい、尊はどーんと受け止めるべきなの!」
「…俺は、早く大人になりたいんだ。」
だからやっぱり我慢すると言うと、困ったように笑った双子に左右から頭を撫でられた。
「小鳥ちゃんは、早く尊に追い付きたいのねぇ。」
しみじみと薫に言われ、小鳥は頷く。
「でもね、それって勿体ないわよ?これはいつか、静ちゃんが言ってた事なんだけど…」
そう前置いて、翠と薫が目を見合わせて悪戯に笑う。
「人間、平均寿命を生ききったら、子供でいられる時間の方が圧倒的に少ないうえに、子供は大人になれるけど、大人は子供に戻れない。」
「嫌でも大人にならなきゃいけないんだから、子供でいられるうちはおもいっきり子供でいなきゃ損だー!って。」
シンプルで不思議と説得力のある静の持論。何ともあの明るい男らしい考えだ。
「…静らしいな。」
賑やかなオレンジの頭と、人懐っこい静の笑顔を思い出し、自然と表情が和らいだ。
小鳥につられるように、薫と翠も穏やかに微笑む。
「我慢なんて、大人になったらいくらでも出来るわよ。」
「そんなに急いで大人にならなくても良いんじゃない?」
「……。」
二人の言葉に、まだ完全には納得出来ない。
けれど、さっきまでよりは、何やら気持ちが軽くなった気がした。
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