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20にしおりをはさみました!
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20
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あれは‥そう‥
どうしたらいいか
これからどうすべきか
考えなきゃいけない事は山ほどあったけど、何処から考えて何処から手を付けたらいいのか‥涙に蓋をする事で精一杯だった‥
両親の葬儀が終わって少し経った日の事だ。
「永久‥大丈夫か?」
「‥」
ずっと住んでいた一軒家の俺の部屋。ベッドに腰掛ける俺を覗き込むのは袴田先生だった。
「永久?」
「‥なんで‥毎日家来るの?」
「心配だから?」
「‥」
誰も居ない部屋を出て
誰も居ない部屋に帰る
学校は休まずに通った
なのに何故か先生は毎日家を訪ねて来た
「食事‥してないんだろ」
「‥食欲無いから」
「気持ちは分かるけど食べないと体壊すぞ」
「‥はあ」
「永久?」
溜め息を吐いてベッドに体を沈める。腕で目元を覆ってしまえば真っ暗闇だった。
「先生‥」
「ん?」
「‥俺‥どうしたらいいんだろう」
「どうって?」
「‥親が死んだのはショックだった。思ってもいない事だったから」
「うん」
「旅行‥楽しみにしてたんだ」
「うん」
「お土産、買って来るからねって‥約束もした」
「‥そうか」
「嬉しそうな顔‥まだこんなにハッキリ思い出せるのに‥朝起きる度、家に帰って来る度‥思い知る。何処にも居ないんだって」
「‥うん」
「そうするとさ‥悲しくて悲しくて仕方なくなるんだ‥でも次の瞬間には違う事も思ってる」
「違う事?」
「俺‥どうしたらいいんだろうって」
「‥」
下唇を強く噛んでから息を吸い込む。
「‥高校辞めて働くか?この家は売るか?爺ちゃん婆ちゃん家に世話になるか?」
「‥」
「世話になるなら高校は転校か?そうしたらもう桃や壱には会えない。俺はどうしたい?どうしたいって考えがあったとして‥それを突き通していいの?どうするべき?」
「‥」
「爺ちゃん婆ちゃんは‥好きにしたら良いって言ってくれた。優しいんだと思う」
「‥」
「俺はその優しさに‥何処まで甘えていいんだ?何が正解?」
「永久」
「もう‥分かんないんだ。どうして俺は一緒に死ななかった?どうして俺は‥まだ生きてる?でも‥死ぬのは怖い」
「‥永久」
「‥」
なんでこんな事、馬鹿正直に話したのか分からない。
話す声は驚く程震えていて、ただ不安と恐怖に押し潰されてたのは確かだった。
分かってる事、分からない事、迷ってる事、頭はぐるぐると同じ事を巡って‥それでも時間は簡単に過ぎていく。
「すみません‥俺こんな」
「いい。聞くから話して」
「‥聞かなくていいです。俺、悲しいのは本当だけど、自分の保身とか‥そんなんばっか考えちゃって‥汚くて最低で幼稚だから」
「自分の事を考えるのは当たり前だろ?」
「‥」
「永久の好きにしたらいい」
「‥先生も同じ事言うんですか」
「ははっ。でもさ‥」
「?」
先生は大きく空気を吸い込み吐き出した。
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