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episode.152 痛いにしおりをはさみました!
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episode.152 痛い
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〜恋side〜
7月6日 朝
「れ、恋?!」
昨晩、赤津はいつも明希たちが泊まる部屋で寝て、恋は1人、広いベッドに寝た。
そのせいか、涙が止まらず、結局朝まで泣き通しで、真っ赤な目をしたまま隣の家に来ていた。
「ど、どうしたの?昨日報告なかったから心配してたけど……まさか……」
「……っ赤津さん、ローデンスに行くって……」
言葉に出したら、また涙がにじんできた。
もう一生分泣いたのではないかと思うほど涙が溢れたのに、それでも涙が止まらなかった。
「と、とりあえず家入る?紘さん仕事だから、今誰もいないし……」
千秋の言葉に頷くしかできなかった。
「明希も呼ぼうか?」
ソファに腰掛けると千秋が紅茶を出してそういった。
恋はそれにもこくりと頷く。
千秋はすぐに明希に電話をかけ、明希も家で1人だったのかすぐに行くと言ってきたらしい。
そして数分後、インターフォンが鳴った。
「うわ……予想以上にひどい顔。とりあえず目冷やした方が良さそう。」
明希が恋の顔を見てそう言い、千秋はそれを聞いて氷袋を用意した。
「これ、当てときな。ソファ寝てていいから。」
「うん……」
千秋に言われた通りに、ソファに寝転がり、目元に氷袋を当てる。
ひんやりとした感覚が心地よかった。
「で……琉さん、ローデンス行くの……?」
「っ、うん……」
明希にそう聞かれると、また泣きそうになった。
「小雪さんと……?」
「うん……俺、ちゃんと応援できたと思う……」
「恋……」
千秋が眉を下げる。
「ちゃんと、言えたし……応援、してるって、言え、たからっ……だからっ……」
明希が、肩を震わせる恋の頭にそっと手を伸ばした。
「泣いていいよ。俺たちの前では、我慢しなくていいよ。本当はどう思ってるの?俺たちには言っていいよ。もちろん翔也さんや紘さんには言わないから。」
「そうだよ……僕たちの前でも我慢することなんてない。辛いって……言っていいよ?」
「……うっ、ぅ……い、や……だ。」
恋は絞り出すような小さな声で話す。
「あか、つ……さんがっ……ローデンス、に行くのっ、嫌だっ……」
そう言ったら、恋の目からはまた涙が溢れた。
「嫌だ……嫌だよぉ……あかっ、つ、さんっ……行かないで……嫌だ、行かないでっ、ほしいっ……」
涙でぐしょぐしょになった氷袋を、千秋が恋の目元から離す。そして優しく頭を撫でた。
恋は体を起こすと、明希と千秋にしがみつくように抱きついた。
「痛い……痛いんだ……胸が、ぎゅってなるんだ……」
「うん……うん、辛いね……」
明希はポンポンと優しく背中を叩いた。
「う……あぁぁぁ!あぁぁぁっ、うぁぁぁっ……」
とうとう、恋は声をあげて泣き出した。
明希も千秋も、何も言わずに、ただ抱きしめてくれていた。
昨晩寝ていなかったせいか、恋はいつの間にか意識を手放し、次に起きた時はもう昼を過ぎていた。
「あ、起きた?ご飯食べる?」
「食欲ない……」
千秋の言葉に恋はそう言った。
「そう言うと思っておかゆにしたから、食べな?」
明希にそう言われ、恋は素直に頷き、少しではあるものの胃の中に入れた。
夕方まで、千秋と明希は恋に寄り添ってくれていた。
夕方、恋は家に戻り、赤津や小雪と顔を合わせても、いつも通りを演じた。
演じれば演じるほど、胸が痛くてたまらなかった。
だが、自分のワガママで、赤津を引き止めるのは嫌だった。
明日は、赤津たちの出発の日だった。
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