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episode.154 2度目の七夕にしおりをはさみました!
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episode.154 2度目の七夕
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〜琉side〜
「はぁ……」
琉はため息をついた。
どうしても、気持ちを伝えずにローデンスに行く気になれなかった。
だが、直接それを伝えれば、恋を無理させるのではないかと、そう思った。
だから、ウサギに録音した。
ウサギの左の手のひらを押すなんてそんな偶然が起こりうるとも思えなかったが、もし、そんな偶然があるとしたら。
それは恋がウサギを大切にしてくれていて、抱きしめたりした時ならありえると思った。
もし、そうなる時があるのなら、自分にも少しだけ望みがあるかもしれない。そう思った。
タクシーで通り過ぎる街並みは、すっかり七夕だった。
七夕。
年に一度、織姫と彦星が合うことを許された日。
そして、この日に出会った2人を、永遠に結びつける不思議な力があるとされている日。
(永遠、か。)
去年の七夕には、恋に会って、思い切り吐いたんだったか、と琉は思い、苦笑した。
あの時は、まさかここまで惹かれるとは思っていなかった。
こんなにも手放すのが辛いなど、考えてもみなかった。
ただの契約。
そう思っていた。
だが、徐々に彼に惹かれ、自分のものにしたいと思った。
誰にも渡したくない。
そう思うようになった。
これも、七夕の不思議な力だろうか。
「琉さん、もうすぐ空港着くよ。」
12時、琉たちは、空港に到着した。
便の出発は16時だった。
「ご飯でも食べる?」
「そうだな。」
琉と小雪は軽めに昼食を済ませ、空港のロビーで待っていた。
14時になった頃、外が暗くなり始めた。
「雨でも降りそうだね。」
「そうだな。」
小雪の言葉通り、すぐにポツポツと雨が降り始めた。
「ねえ、お母さん。」
ふと、近くを通った少女が母親に話しかけた。
「ん?」
「前にさ、七夕の日は織姫様と彦星様が会える日だって言ってたよね?」
「そうねえ。」
「雨が降っても2人は会えるの?」
「残念ながら、雨が降ったら2人は会えないのよ。」
「そうなの?じゃあきっと……2人が泣いてるんだね。」
「そうかもしれないわね……夜までに晴れたら、会えるかもしれないわね。」
「そうなの?!じゃあ晴れるといいねー!」
少女は無邪気にそう言いながら母親に連れられてどこかに行ってしまった。
「想像力豊かな子だね。織姫と彦星が泣いてる、なんて。」
「あぁ、でも今の日本の伝説ではあの話、間違ってないだろう?」
催涙雨。
七夕に降る雨はそう呼ばれている。
織姫と彦星が、会えなかったことで流す涙。
「催涙雨……か。琉さんたちのせいかもね……」
小雪はボソリとそう呟いたが、琉には聞こえなかった。
「何か言ったか?」
「ううん、なんでもないよ。」
外の雨は強さを増し、雷まで鳴り出しそうな雰囲気だった。
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