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〜恋side〜
9月5日 青木家
「ハルアキ、俺のこと忘れちゃったの?!」
「タツト、落ち着け。」
恋の目の前で繰り広げられる台本通りの展開。
小雪がタツト役をやり、翔也は実際の役、イチタ役である。
本来スズヤはこの場にいないのだが、恋は3人の様子を眺めていた。
「…悪い。俺、今日はもう帰る。」
ドラマでは、そう言って立ち去ったハルアキを、イチタが追いかけ、話を聞く。
「ハル、どういうことだ。」
「ただのド忘れだ。」
「じゃあ、さっき会ったのは誰だ?」
ここでハルアキは黙り込む。
イチタに真実を言ってしまいたいが、言えない。もどかしい葛藤だ。
「ハル、教えて。」
「…約束できるか?他言しないと。」
「しない。だから教えて。」
ここでハルアキは折れてイチタに真実を話す。
「スズヤには言ったのか?」
ハルアキは首を振る。その時の表情は、切ない笑顔。
琉の表情はまさしくそれだ。愛しい人を思い浮かべている、そんな笑顔だ。
「スズヤには言うべきだ。」
「イチ。言わないって、約束しただろ?」
「スズヤはお前の恋人だぞ。」
「…だからこそ言えない。スズだけには言いたくない。スズが泣くの、見たくないから。」
琉はそう言って、切ない表情をする。
琉の演技を目の当たりにし、恋は改めて琉の凄さを知った。
このあと、台本ではイチタとハルアキは別れ、それぞれ帰宅する。
それからハルアキは、日記をつけることを決める。
最初に忘れたくないものリストを書き出す。
家族、友人、近所のこと、思い出、そしてスズヤ。
琉は本当にノートを持ってきて、そこに書き始める。
琉は本気で役作りにのめり込んでいるらしい。
それを見ていた恋も、琉の役に立つために頑張ろう、と決意する。
「ハル?帰ってるの?」
台本通りのセリフを口にする。
日記を書いていたことがバレないよう、ハルアキは慌ててそれをしまって、スズヤに返事を返す。
「おかえり、スズ。」
ハルアキはスズヤにいつも通りの笑顔を見せる。
「早かったんだね。」
「まあな。」
どこかぎごちないハルアキに、スズヤは違和感を感じる。
でもそれは言葉に出すことはなく、表情だけでそれを表す。
結局、ハルアキとスズヤはそれ以上の話しをすることなく、この1日は終わる。
「…うん、いい感じだね。」
「こんなんで大丈夫ですかね…?」
「うん。大丈夫!」
「恋さん、表情作るのうまいね。」
翔也、小雪、恋の3人は小声で話をする。
琉は役になりきっているため、この話を聞かれないようにするためだ。
「やっぱり、琉さんも恋さん相手だとかなりいい顔するよね。」
「そうだな。現場でNGもらってばっかだったときとは全然違うよ。」
「そうなんですか…役に立ててるならよかったです。」
「さて、今日はここまでだから俺は帰るね。明日から少しずつ、ハルアキが追い込まれていって、多分琉の様子も変わってくると思うから…なんか心配だったらいつでも言って。」
「ありがとうございます。」
「明希ちゃんと千秋ちゃんも手伝ってくれるって言ってたから、今度、近所の高校生役とか頼んでみよっか。」
「はい。」
翔也が帰り、3人は食事やらなんやらを済ませ、ベットに入る。
「スズ。」
台本にはない、琉が役になりきっているからこその会話。
琉に合わせなくては、と恋は身構える。
「どうしたの、ハル。」
「……なんでもないよ。」
琉はそう言って微笑む。
だがその笑顔はどこか苦しそうだ。
「ハル…?」
自然と恋の口調も不安げになる。
「寝よっか。おやすみ。」
琉はそう言って恋を抱きしめ、トントン、と背中をさする。
温かくて、心地よいその状況に、恋の瞼は重くなり、そのまま眠りへと落ちていった。
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