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〜千秋side〜
「綺麗…」
車を走らせ、水族館に近づいてきた。
道路からは海が見えて、陽の光に照らされて海面はキラキラと輝いていた。
「もうすぐ着くぞ。」
飽きもせず海を眺めていると、紘にそう言われた。
「後で海に行ってみるか?」
「いいんですか?」
「いいよ。帰りに寄ってみようか。」
紘はそう言って頭をポンと撫でる。
そのちょっとした温もりに、千秋の心は温かくなる。
「さて、着いたぞ。」
紘は車を停め、千秋が座っていた助手席の扉を開ける。
「さ、行こうか。」
紘の手が差し出されてそれを掴む。
そのまま指を絡めるように手を握られ、水族館に向かう。
この水族館はだいぶ昔からあるもので、人気も高い。
今日は日曜日だからか、人も多かった。
「大人2枚。」
チケットを購入して中に入る。
「何見たい?」
「…ペンギン…?」
「ふはは!いいよ、ペンギンね。」
紘は楽しそうに笑って千秋の手を引く。
そこら中にカップルやら家族連れやらがいて、千秋は思わずキョロキョロとしてしまう。
男性同士もかなりいて、紘と手をつないでいる自分でもあまり浮いていないことを確認し、少し安心した。
紘と手をつないで歩けることはもちろん嬉しいのだが、やはり人前でそういうことをするのは少し恥ずかしかった。
「千秋、ほら、ペンギン。」
紘に指差され、目をやると、自由きままに様々なことをしているペンギンが目に入る。
「かわいい…」
ふふ、と笑みが溢れ、幸せを実感する。
そのあとも、紘に連れられて色々なブースを見に行く。
最後に立ち止まったのは、大水槽の前だった。
好きな人と、こうして出かけることができる誕生日。
ずっと昔に、もう自分にはないものだと諦めていた。
それが今、ここにある。
「こんなに幸せでいいのかなぁ…」
思わずそう呟く。
すると紘が、つないだ手に力を入れた。
「千秋はもう1人じゃないからな。それに、俺にも千秋がいるから。2人で幸せになろう。」
薄暗い館内でもわかるくらい、きっと自分の顔は真っ赤だろう、と千秋は思った。
紘の方に視線をやると、紘も少し顔が赤い。
「…千秋、誕生日おめでとう。」
そう言って紘が差し出したのは、濃い紺色の小さな箱で。
千秋でもなんとなく、中身の想像がついた。
「受け取ってほしい。」
パコ、と開いた箱の中には、キラキラと輝くダイヤモンドの指輪。
小さなダイヤモンドが埋め込まれているだけなのに、それはものすごく輝いている気がした。
「…受けとって、くれるか?」
頷く前に、この指輪の意味を思って、頬に温かいものが流れた。
「ははっ…人生をかけたプロポーズで、相手を泣かせるとはね。」
そう言う紘の表情は、ものすごく柔らかくて、温かい微笑みだった。
「っ…ひ、ろ…さんっ…」
止めようと思えば思うほど、涙が溢れて止まらない。
それは決して、辛い涙じゃないはずなのに、胸がぎゅっと締め付けられるような気がした。
「千秋。」
次に出てくる言葉は想像がついて
それを言われたら幸せすぎて、胸が張り裂けてしまうような気がして
千秋は首を横に振る。
これ以上幸せになったら
二度とその幸せを手放せない。
「愛してる。」
そう言って、そっと抱きしめられた。
その瞬間、ここがどこかも忘れて、広い背中に腕を回した。
「僕もっ…僕も…紘さんのこと…愛してる…紘っ…さんが…っ…好きっ…」
トク、トク、と胸から伝わる鼓動に、言いようのない安心感が広がり、また涙が溢れる。
紘は千秋を一度体から離し、左手をそっと自分の手のひらにのせた。
「つけてもいいか?」
「はいっ…」
スルリとはめ込まれた指輪のサイズはピッタリで
ヒヤリとした金属の感覚が、これが夢ではないことを教えてくれていた。
「幸せすぎて…夢…みたいです…」
「ははっ!俺もだよ。」
紘と目が合う。
綺麗なその瞳に、吸い込まれそうだと思う。
紘な柔らかい表情をしていて、千秋は温かい気持ちになった。
「紘さん…好きです。」
自然に漏れたその言葉に、紘は一瞬目を見開き、ふぅ、と息を吐きながらまた笑う。
「俺、我慢は出来る方だったんだけどな。」
紘がそう呟いたことの意味がわからず、千秋が首を傾げていると、紘が手を引いて歩き出した。
この後、千秋は少しだけ、自分の行動を後悔することになった。
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