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〜紘side〜
「どうした千秋?」
スマホを見てクスクスと笑う千秋に、紘はそう問いかける。
「恋と明希が、今日出かけてたんですけど、出先で琉さんと翔也さんに会ったみたいで。偶然ってすごいですね。」
朝から外出して、美術館を見て回った2人は、昼食を終えて外のベンチで一休みしていた。
今日は冬にしては暖かく、外にいるのも苦ではない。
「千秋、どこか行きたいところある?」
「んー…特にないですけど…」
さりげなく繋いだ千秋の左手に、誕生日に贈ったリングがはまっていて、紘の口元が緩む。
「あ、紘さん、話したいことがあって…」
「ん?なに?」
「あの…」
なんだか緊張している様子の千秋の言葉を、急かすことなくじっと待つ。
「ぼ、僕…保育士に、なりたいんです。」
千秋の言葉に、紘はまず驚いたが、その次に嬉しさがこみ上げてくる。
千秋がやりたいことを見つけてくれて、それを自分に打ち明けてくれた。
それがものすごく嬉しかった。
「うん。千秋がやりたいことなら俺は応援するよ。」
「ほ、本当ですか?」
「もちろん。学校に行きたいって言うなら支援もするし、して欲しいことがあればなんでもする。千秋が自分の力でやりたいって言うなら、もちろんそれも尊重する。」
紘は優しく微笑んで、千秋にそう言った。
千秋はそれを見てホッとした表情を浮かべた。
「学校は、行きたいので、お金…お願いしたくて…絶対、返すので。」
「もちろん、いいよ。でもゆくゆくは、俺は千秋と結婚したいから、お金は返さなくていいんだけどね。」
思っていたことを素直に言えば、千秋はカァッと顔を赤くした。
「千秋のやりたいようにやってごらん。」
そう言って頭をポン、と撫でると千秋は嬉しそうに微笑む。
「ありがとうございます。紘さんに、応援してもらえてよかった。」
「千秋がやりたいことならなんでも応援するよ。千秋が自分の身を犠牲にするとかじゃなければね。」
千秋は、望みをあまり言わない。
でもやりたいことがあるなら、やってほしいと、そう思っていた。
だから今回のことは、紘にとってすごく嬉しいことだったのだ。
「でも、どうして保育士なんだ?」
「子供は元々好きなんですけど…人と関わる仕事がしたいっていうのは、ずっと思ってて…保育士として、小さい子とか、その親とかと関わって、その人達が笑ってくれたらなぁって思ったんです。なんか、ボヤァっとした理由なんですけど…」
「いいじゃないか。」
「頑張ってみたいんです。僕も、誰かを笑顔にしたい。」
そう言う千秋は、強い意志を持っている目をしていて、紘はより一層嬉しくなる。
「うん。俺は応援しかできないけど、千秋の味方だから。辛いことがあったら頼って。」
「はい。ありがとうございます。」
ふわっと笑った千秋の笑顔に、紘の心が温かくなる。
「よし、そろそろ行くか。」
「はい。」
手を繋いで歩き出す。
「千秋、好きだよ。」
「えっ、あっ…もう、突然、言わないでください…」
千秋はポポポッと頬を赤くする。
「ごめん。なんか言いたくなったんだ。」
「…恥ずかしいだけで…嬉しいですから…謝らないで…」
「…ふふ、ありがとう。」
そう言って頭を撫でる。
「…ぼ、僕も…好き。」
千秋が俯いて、小さな声でそう言う。
「はぁー…やっぱデート来るとダメだな。」
「え?」
「今すぐ抱きたい。」
「えっ!」
「大丈夫、ちゃんと我慢するよ。」
千秋は恥ずかしそうに目をそらす。
「…帰るまではね。」
ポツリと呟いた紘のその声は、俯く千秋には届いていなかったのだった。
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