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〜琉side〜
「琉!」
家が間近に迫った時、大声で呼ばれて振り返ると、怖い顔をした翔也がいた。
「翔也…ッ!!」
名前をつぶやいたその瞬間、目の前にやってきた翔也に思い切り頬を殴られる。
かなり強かったらしく、口の中が切れ、血の味がした。
「お前何考えとるん?!どんだけ恋くんのこと傷つける気やねん?」
関西弁になっているのだから、本気で怒っているのだろう。
「恋くん、泣いとるってよ?なんで迎えに行かへんの?」
泣いてる、と聞いて、胸が痛む。
泣かせたのは自分だから、余計に苦しい。
「こんなとこでうじうじしてる場合ちゃうんやない?」
「迎えに行くっていっても…場所もわかんねえし。」
なにより、その資格がない。
「小雪ちゃんが泊まっとるホテルにおるんやって。小雪ちゃん日本に帰ってきとるらしいで。ホテルの場所も聞いとるから、さっさと迎えに…」
「できない。」
「はぁ?」
翔也の声色が、低く冷たいものになる。
「お前、恋くんと婚姻届出しにいくっていう日に、何を迷ってん?意味わからん。女と会ったとかなんとか、小雪ちゃんから聞いたけど、それでなんで恋くんが泣くことになるん?お前アホなん?」
翔也がこんなに怒ることは珍しい。
本気で心配してくれているのだろう。
「恋は、俺といて、幸せになれるのか?」
「は?」
「俺はこれかも、恋を傷つけるかもしれないし、恋を泣かせるかもしれない。俺はゲイでもバイでもないから、恋を不安にさせることも多いかもしれない。」
心の中で、ずっと引っかかっていたこと。
恋は本当に、自分といることが幸せなのかという疑問。
「恋は、俺といても傷つくだけなんじゃ…」
「お前…ほんまにアホやな。アホすぎて呆れるわ。そんなん今更やろ!お前と一緒にいたくないんやったら、空港までわざわざ追いかけへんやろ?!ケンカしたからってお前の実家行かへんやろ!お前が好きで、お前と一緒にいたいからそういうことすんのや!!」
翔也はそこまでいって、琉の額を小突く。
「お前、変なとこでヘタレやなぁ…こういうとこは、ビシッと男らしく決めんか!お前はどうしたいん?誰がどうとかどうでもええ。お前はどうしたいん?恋くんと一緒にいたいんちゃうん?」
「…一緒に、いたいに決まってる。」
「んなら迎えにいってこい。その前に女の問題片付けてからやけどな。」
「でも…」
「んぁぁ!!お前本当にヘタレ!!恋くんはお前の奥さんになるんやろ?!お前にはもう恋くんしかおらんのとちゃうん?!」
「そりゃ、俺には恋しかいないよ。俺はもう、恋しか愛さない。」
「ほんなら恋くんも同じやねん!!いい加減うじうじしとんのやめんかい!さっさと女とけじめつけて、お前の奥さん迎えに行きぃ!!」
翔也にそこまで言われて、やっと気づいた。
恋に、愛していると、そう言い続けてきたけれど
確かに恋も、それを返してくれていた。
"俺も愛している"
"俺も好きだ"
恋は確かにそう言ってくれていた。
プロポーズしたときも、手を離さないと言った時も、恋は全て、同じだけ、琉に返してくれていた。
恋は自分を信じてくれたのに
自分は恋を信じていなかったなんて、馬鹿らしい。
「んで、協力してほしいことは?」
「…小雪に、明日の夜は恋をホテルにいさせてって。どんなに遅くなっても絶対に迎えにいくから。そう言っといて。」
琉はそう言うと、スマホで電話をかけながら、来た道を戻り始めた。
「…ったく、気づくのが遅いんだよ、あのニブチン。」
1人残された翔也はそう言って苦笑した。
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