アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
*186にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
*186
-
〜傑side〜
やっぱり、翔也は怒っている。
「その、す、すいません…」
『…はぁ…何に怒っとるかわかっとらんやろ。』
「えっ?」
『俺はな、別に身を呈して明希ちゃんたちを守って欲しいなんて思ってないんよ。無茶して傑くんが襲われてって、それは違うやろ。』
翔也は、傑の無茶に怒っているようだった。
『傑くんに何かされて、明希ちゃんたちが泣くんやったら、俺、傑くんを許さへんよ。でもな?別のやつらに絡まれたんを、傑くんが守りきれなくたって、怒ったりせえへんで。頼むから、自分の身も大切にして。』
「っ…ごめんなさい。」
翔也は、優しい。
本当は、もう、自分のことを怒ってなどいないのだ。
全く不安がないといえば、嘘になるだろうが、翔也はもう、傑を許してくれている。
今日、4人だけで出かけさせたのは、おそらく明希のためだろう。
トラウマの元凶である傑と、本当の意味で打ち解け、友人になるための機会を、翔也がお膳立てしてくれたのだ。
『わかればよし。今向かってるから。どこで待ってるかだけ後でLINE送って?』
「はい。明希に変わります?」
『いや。もう大丈夫。俺たち着くまで、とりあえず3人のことよろしくね。守れ、とは言わないけど、やっぱり3人だけにするわけにいかないからね。』
翔也はそう言って笑う。
傑の心が、ものすごく軽くなった。
『じゃ、また。』
電話が切れて、明希にスマホを返す。
「えっ、傑、お前大丈夫か?」
「は?」
「わっ、な、泣いてるよ?!」
「えっ。」
恋と明希がワタワタとしながらそう言ってきて、自分の頬に手を当てる。
確かにその頬は濡れていて、自分でも驚いた。
怖かったわけではない。
されかけた、というだけで、何かされたわけでもない。
それなのになぜ、泣いているのかと言われれば、翔也の言葉のせいな気がした。
「…んな顔すんなよ。別に怖かったから泣いてるわけじゃないし、怒られたわけでも…いや、怒られたけど、お前らが想像してるのとは違うから。」
「えっ、怒られたの?」
「無茶すんなって、言われた。」
「それで泣いてんの?」
恋が心底驚いた、という顔をする。
傑自身だって驚いているのだから当然かもしれない。
「そうみたいだな。とりあえず移動するぞ。」
「泣いたのになんでそんなに復活早いの?!」
「明希は泣きすぎだろ。恋も泣きそうだし。」
「は?俺は泣いてないし。」
「千秋は?千秋は?!」
「なんで僕も泣かせようとするの?」
くだらない会話に、4人揃って吹き出す。
20歳にもなって、こんな風に友人と出かけたり、笑いあったりできることは、ものすごく幸せなことな気がした。
恋も明希も、そして千秋も、傑のことを受け入れてくれた。
簡単に人を受け入れるその無防備さはいささか心配ではあるが、今の傑にはありがたい。
ずっと、後悔していた。
明希にあんなことをして、そのまま高校は別れて、再会してもまた同じことをして。
受け入れてもらえないだろうと、心のどこかでずっと思っていた。
だから、3人を守らないといけない、と思っていた。
どうやらそれは、傑の勝手な思い込みだったらしい。
「旅行、大丈夫かな…」
「大丈夫だろ。傑がなにか悪いことしたわけじゃないし。」
「うんうん。明希の口からもそう言えば、翔也さんならきっとわかってくれるし。そもそも傑に怒ってるのも、傑が無茶したからみたいだしね。」
「旅行行きたいし…傑ともせっかく仲直りできたし…」
「なんでまた泣きそうになってんだよ。」
「傑のせいだよぉぉ…」
「なんでだよ。」
「友達が襲われそうになったら心配するでしょ普通。」
そう言う明希は、確かに恋が襲われた時も泣いていたように思う。
「翔也さんには、お前らのこと守ってくれとは言わないって言われたけどさ。」
「うん?」
「…やっぱ俺はお前らのこと守るわ。」
「え?なんで?」
「俺たちってそんなにやばい?!」
「友達として心配だから。俺が守れる範囲は守る。」
「と、友達…」
「なんだよ、違うの?」
「いやいや!!」
ニコニコと嬉しそうに笑う明希を見ると、きちんと謝れてよかったと思う。
傑が、本当の意味で明希と和解した瞬間だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
389 / 832