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沈黙(幸輝)にしおりをはさみました!
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沈黙(幸輝)
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...え?
あっくん、なんで止まるの?
「コウ...」
「あっくん?」
神妙な面持ち。
なんか...言っちゃいけないことだった感じ?
「コウ、運命の番っていうのは本当にあるよ。
MiRRORの彰、分かる?」
もちろん、分かるよ。
MiRRORはsugeretの後輩グループで、sugeretと同様に国民的に有名なグループ。
メンバーは、βのマヒロくん・αのレオくん・Ωのアキラくんの3人で
レオくんとアキラくんは番だ。
「アキラくんがどうかしたの?」
あっくんは、悲しいのか苦しいのかよくわかんない顔で微笑む。
キレイだと思ってしまったのは、僕だけの秘密だ。
「その、彰の知り合いっていうか...友達っていうか...
まぁ、いるんだ。『運命の番』が。」
ま、さか。
こんなに近くにいるなんて、思っても見なかった。
ネットだけの話なんじゃないかって
どっかで考えていたから。
「それじゃあ...僕たちは」
「運命、じゃないね。」
冷たい笑顔でそう告げるあっくん。
こういう顔してる時は、何かを諦めようとする時の顔だ。
僕も何度か見た。
バスケの部活に入りたい、けど事務所に止められたとき。
僕と遊びに行きたい、けど仕事が入ったとき。
それと。
一緒にグループを組もうっていっていた人が、大学に行くからやらない。といわれた日。
諦めたくない、けど諦めなくちゃいけない。
そんなときに、あっくんは冷たい顔で笑う。
けど、どんなときも『嫌だ』とは言わないし、
後からも弱音は吐かない。
そういうところは、カッコイイと思うよ。
尊敬してるよ。
でも、今は?
...今は何を諦めようとしているの?
「もしも...」
あっくんは、冷たい笑顔のまま僕に投げ掛ける。
「もしも、コウが俺と番なのが嫌なら...」
――パシッ
あ、やばい。
アイドルは顔が命。ぶったりしちゃダメだって
わかってた。わかってたけど。
それ以上、言わせたくなかった。
聞きたくなかった。
「なに、バカなこといってんの?!
僕、いつあっくんといるの嫌って言ったの?!
あっくんのこと、大好きだから側に居るんだよ?!
僕は5年間ずっっっっと、あっくんのこと好きだから
あっくんが他の子に笑いかけるの、本当は嫌だけど
あっくんがしたいことだから、
あっくんが疲れてても笑って帰ってくるから、
だから僕はアイドルだって、ダメって言わなかったって
それも言ったよね?!!
もう何にも隠してることもないのに
あっくんが僕の全部なのに、なんで諦めようとするの?!
僕、何にも言ってないし
言ったとしても、止めてよ。
なん、で...?」
困ってる顔が、目に映って。
だんだん、歪んで見えなくなる。
それが嫌で瞬きをしたら、キレイにあっくんが見えた変わりに
必死で隠そうとした、ソレが止まらなくなってしまった。
「なんで...、わかって くれないの・ ・・?
こんなに、こんなに...
だい、すき
ふっぅぅぅぅ・・・っうっく
ひっ...あっ、くんのばかぁぁぁぁ」
ついにダメだ、と思ったらしく
あっくんは僕の肩からそっと腕を回して
抱き締めてくれた。
――あったかい
「ごめん、ごめんね。
コウ泣かないで。お願い。
もう、言わないから。コウのことだけは諦めないから」
耳元で響く、聞きなれているのに
初めて聞くような
そんな声。
いつだって、安心してここにずっと居れたらって思う。
「コウ、俺らは運命だよ。
例え運命の番じゃなくても、俺らは産まれる前から
一緒に居るんだってことが決まってたんだよ。
きっと。」
うん、うん。と頷く。
よしっ、と小さく意気込んだあっくんは
「ご飯食べよう?」と
僕に手を差しのべてくれる。
僕は、まるで当たり前かのようにその手をとったけど
『もしかしたら、あっくんの隣は僕じゃなかったのかも』って
ふと浮かんだ。
だって、僕らは体が離れることを許さない
『運命』じゃないから。
それでも、僕は笑う。
あっくんの隣で、あっくんの手をとる。
まるで、僕らが運命だと言うかのように。
全て、決まっていたんだ。と言わんばかりに。
「コウ、愛してるよ。」
響く声が、決して嘘なんかじゃないって。
信じて。
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