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、にしおりをはさみました!
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「うっ………」
「ごめん、臭いけど我慢して………」
臭いとか、もはやそういう問題ではない気がする。
人として生きてきた倫理観が目の前の液体を拒否していた。
「もったいねぇ、光彦のは有難いって有名なんだぜ」
「雅歌」
「分かってる、大丈夫だ」
それに、これには…
包帯を巻いたみちを見るとまだ麻酔が切れていないのか、目だけがこちらを見ていた。
けれどさっきよりも手を握る力が強くなった。
「全部、だよな」
「うん」
赤い、赤い、血の様な、本物の血だ。
『毒杯』という言葉が浮かんだ。
「…毒杯は」
「え?」
「毒杯を賜るってことは、死を意味する。それを飲めば、お前のDNA情報はある一部だけ変化する。けれど作られる細胞や組織は飲む前とでは全く違うものになる。
それはつまり、飲む前の飲んだ後では違うお前だということだ。
今までのお前は今日で死ぬ。そして今日からは新しいお前として生きていくだ」
「雅歌、さん…」
「生きろ」
「生きて」
光彦…
こんなに、私のことを想ってくれる神さまがいる…
応えたい…
きっと、きっと大丈夫だ…
震える手で盃を支えながら縁に口を付ける。
盃を傾けて、血を口の中に入れる。
鉄臭い…
酷い臭いと、味だった。
それでも目を瞑り喉へと流し込む。
まだか、未だか…
血がどこを通っているのかが分かった。
やがて、口の中に入ってくるある量が減り、目を開けると、あと少しだった。
盃をさらに傾けて最後まで飲み込むと、途端に気持ち悪さが襲ってきた。
「うぇっ………あっ、あっ………おえぇ」
とても耐えきれなくて、盃を放り出して上体を倒す。
「気持ち、わるっ」
「大丈夫、大丈夫」
光彦が背中をさすってくれていたけど、それどころではなかった。
「人間にはそれが正しい反応だ」
雅歌さんの声に、苛立ちを覚えてた。
これはそんな言葉で言い切れるものじゃない。
本当に、毒杯のようだ。
全身が熱くて、痛くて…吐きそうで、それから…
意識を飛ばしてしまいたかったけれど、この状況は日が昇るまで続いた。
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