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ちぎり、ちぎり(12/21)にしおりをはさみました!
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ちぎり、ちぎり(12/21)
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──指輪……。
"愛しあっている人達はね、左手の薬指に指輪をしてるんだ。俺のかーちゃんも、とーちゃんもしてるよ"
昔、達希が我にそう言った。
やはり小僧には恋人がいたのだな……奴の母親も、そのような言い回しをしていた。
裏切り者め……。
さて、どうしようか。
達希の瞳は今でも我の姿を映すのだろうか。
見ることが出来なければ、達希の子を喰らうことになるが……。
頃合いを見計らい、隠れていた木の陰から身を乗り出す。草履が地面の砂利と擦れ、音が鳴った。
石畳の土埃を箒で掃いていた達希が、手を止めて顔を上げる。……目が、合った。
「……白……」
「……」
達希はそう呟くと、目を大きく開いて我の姿をじっと見つめる。
"白"か……そんな名で呼ばれる筋合いは無い。我に名など無い……!
憎しみが溢れ出し叫びそうになるが、ぐっと堪える。
今ここで逃がすわけにはいかぬ。
日が落ちるのを待ち、妖狐の姿になったら此奴を……。
「……あ、えっと…」
我に返った達希は首の後ろを掻き、慌て出す。
ふっ、滑稽だな。
狐の面を被っている為、此奴に顔を見られる事はない。それをいいことに、存分に嘲笑いながら鳥居の柱に寄りかかった。
「久しぶりだな……達希」
「う、うん……ごめんね…!その、忙しくて、来れなくて……」
夕陽が地平線に完全に飲み込まれるまで、あともう少し。
「……約束を忘れてしまうほど、忙しかったのか?」
「えっと……うん。ほんと、ゴメンね、白。これからは──」
「"ゴメン"か……随分と都合のいい言葉だな」
それを聞いた達希はビクッと肩を揺らし、顔を上げた。同時に、我の体が妖狐の姿へと変化していく。
日が落ちた……。
歓喜で身震いし己の白い体毛を躍らせる。
ようやく……やっと、この苦しみから解放されるのだ。
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