アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
上江衿は憂鬱にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
上江衿は憂鬱
-
「お待たせ、しました」
そう声をかけてきたのは黒い革のジャケットを着た青年で、ゆるくパーマが当てられたような黒髪の間から見える瞳はじろっとこちらを睨んでいた。
「え、えーと...えりちゃん」
「えりちゃんって呼ばないでください」
「あれ、ていうか、真ん中分けは...眼鏡は...」
上江だとなんとなくわかったものの
普段はきっちりスーツを着こなし
つまらないくらいの真ん中分けで撫で付けられた髪型だし
限りなく眼鏡かけられ器なのだが
今はどこか気怠げな雰囲気で、ウェーブした髪とそこからチラチラ見える耳には銀色に光るピアスがいくつもついていた。
「元々癖っ毛なんですよ。休みの日はコンタクトです。眼鏡重いので」
「あっそう...」
「さっさと行きましょう先生」
上江はそう言ってポケットに手を突っ込んで歩き出した。
その雰囲気はいつものキリキリ働く彼とは似ても似つかないダウナー系でなんとなく関わってはいけない人感が出ている。
全然別人じゃん...。
やはり官能小説界にまともな人間など1人もいないらしい。
しかしこんなことくらいで気持ちが揺らぐわけもないし寧ろ知らない一面を見れて嬉しく思いながらも會下は彼の背中を追いかけた。
「デートの時くらい先生って呼ぶのやめてよー。」
「何がデートですか...」
「デートでしょぉ僕はそう思ってるもん!」
そういうと彼は何か言いたげな横目で見てくる。
眼鏡のない瞳は、どこか冷ややかでそれでも深淵のように底知れぬ輝きを放っていた。
しかしここで負けてたまるかと、いじわるぅ、という風に口を尖らせると
上江はかしかしと頭を掻いた。
「えいじ、さん。で、いいですか」
照れているのか目を逸らしながら呟く彼に
商売道具の語彙力を奪われそうだった。
「う、うん。でもなんか、小っ恥ずかしいねえ」
「じゃあ呼びません」
「冗談だって。嬉しいよ、えりちゃん」
「えりちゃんはやめろって...」
「じゃあえり」
「全く...」
呆れたようにため息を吐く上江だったが、會下は嬉しかった。
こんな風に相手の反応を盗む見てどぎまぎしたり飛び上がりそうなほど嬉しかったり悶えたり。
今までにもあったはずなのに、妙な新鮮さがあった。
彼についてもっと知りたいし、彼のいろんな表情が見たくなってしまう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 46