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春、出会い、そして…… 第三章 ①にしおりをはさみました!
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春、出会い、そして…… 第三章 ①
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純、秋人、章の三人は、聖の決めた作戦に、大きく頷き動き出す。
章は、一人で戦うことになる秋人へ、力を込めた守護札を渡した。普段は秋人の守りを章自身が行う事が多い。なので、秋人を守れるように、と渡した。守護札を受け取った秋人は、「ありがとう」と笑い、保健室を出て屋上に向かう。
純は少し考えてから、保健室を後にした、多分、全員を動かせる方法を考えていたのだろう。
「じゃあ、章行くぞ」
二人が出た後、聖の言葉に頷いて、聖と共に章も保健室を後にする。
迫りくる相手へと意識を集中する章は、相手の力量をしっかりと測れるように、頑張っているようだ。
最初の一撃を、校舎に少しだけ通過させなければならないのだ。その為には、相手の力を見極めなければならない。間違えると、校舎に被害が出てしまうし、逆だと全員を体育館へ動かす原動力にならなくなってしまうのだ。
「もしうまくいかなかったら、俺の力を校舎にぶつける。気楽になりすぎるのも駄目だが、神経質になりすぎるな」
聖は章へと声をかけた。
感知能力では、章の方が上だ。そして、この学校については純のほうがよく知っている為、この役割分担にしたのだが。章へと負担がかかりすぎることを、聖は考えていた。だからこその、打開策。
「はい」
少し息をはいて、緊張をとくように、章は答えた。だが、顔は緊張で強張ったままだ。こういう戦闘には慣れていない。
慣れていないのは純や秋人もだけれど。
聖は家の都合上、小さい時からやっている。が、慣れてはいても、相手がわからなければ緊張はする。
しかし、聖がここで緊張感を出すのは得策ではない。他の高校生三人が、余計に緊張してしまうから。
校庭に着き、聖は迎え撃つ為に力を体に溜める。章は、結界を校舎へと張り巡らせる。
澱みのない、綺麗な力が校舎を覆った。
「すごいな」
聖は素直に章の力を褒める。滅多に褒められない聖からの賞賛に、章は少し照れたようだ。
その二人の頭上に、敵が現れた。真っ黒なモノは、一気に校舎へと力をぶつけてきた。
が、章の結界によって、弾けて消えた。少しだけ、校舎を揺らしただけに終わる。
聖の作戦第一歩は、成功した。
驚いたのは、真っ黒のモノ。動揺を表すかのように、波打つ。
そこを狙い、聖の力と秋人の力が、同時に攻撃を始める。
さらにソレは動揺する。二か所からの攻撃。自分の力が消えたこと。
【契約者ハコンナコトハ言ッテイナイ。指示ガ、ナイ】
契約者からの指示から外れた事が起こった場合、ソレはただの暴れモノと化す。
純は、放送室にいた。揺れを感じて、全員を移動させるには、うってつけの場所だ。
静かに息を吸い込み、いつもより低い冷たい声を出す。
「今現在、校舎内におられる方々に連絡いたします。先程の地震が、再度発生する恐れがあります。速やかに体育館へと非難してください」
言霊ももちいて。誰にも不思議に思わせないように、全員を移動させる。
校内放送ならば、全員にいきわたるはずだ。ただし、あまり混乱は引き起こさないように、速やかにと。
純は、校舎内の人々の動きを、気を追って感知する。
混乱の起きる場所はなく、校舎にいる人々は、疑問もなく体育館へと移動して行く。
校舎内の気配が、屋上にいる秋人のみになったのを確認して、純は放送室を出て体育館に向かった。
体育館内は、人々でごった返している。そして、地震による騒動も、ここへ来て起きている様だった。
携帯で確認をしている者もいるようだが、先の地震は観測されてはいないので、出ては来ない。
そこに疑問をもたれ、外に出ることをふせぐ為に、純は窓に呪符を飛ばした。呪符による結界で、体育館を覆うのだ。外に人を出さない為にも、自分のもちいる力で一番良い物を純は選んだ。
疑問が膨らめば、騒ぎは大きくなる。結界で誤魔化しが利く時間は限られている。
急いで、村越勇君を探して、外に出なければ。
考えながら純は、飛ばした呪符に力を注ぎ、結界を作り出す。窓を塞ぐそれらは、発光して消えた。
「さてと……」
独り呟く純を気にかける人は誰もいない。
純の行動を見てさえいないのだから、疑問も持たれない。
そう思っていたのだが、純は一つの視線を感じてそちらに目を向けた。
その少年を見て、純は柔らかく笑みを浮かべた。
彼が、村越勇だったからである。探す手間は、省けた。
さすがに、この人数の中、力を持ってはいても、それを扱う術を知らない人物を探すのは、相当の手間がかかると覚悟していたのだが。
「村越勇君だよね、一緒に来てくれるかな?」
柔らかい笑みのまま、純は彼に言葉をかけた。
放送の時のような、声はいらない。ただ、彼に語りかければそれで良い。
扉にも呪符を張って、結界を完成させ、聖たちと早く合流することが一番である。
秋人も、一人で戦うのが長引くのは、苦痛だろう。
探す手間が省けたことは、何よりも大収穫なのだ。
「あんたは……」
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