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春、出会い、そして…… 第三章 ③にしおりをはさみました!
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春、出会い、そして…… 第三章 ③
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なんだ、あれは。校庭へと着いて、勇は思う。
上空の黒い靄のようなモノ。
校庭で戦っているらしき、人々の姿。
校庭へと降りてくる黒い物体は、母を貫いた、あの【何か】に似ていた。
茫然と校庭を見ている勇を、純は静かに見ていた。
手が光り、それで相手を切り裂いているのは、昨日出逢ったっ生徒会長だ。光の剣を持っているのは、先程見た保健医。彼らのそばにいるのは、保健医に連れていかれた具合の悪い、同じ新入生ではなかったか。
「橘秋人生徒会長は知っているね」
勇の隣にいた純は、口を開く。
秋人が、勇について言わなければ、ここに彼を連れてくる事態にもなっていないので、秋人のことを知らないと言われはしないだろう。
確認する純への返答は、勇の頷きだけだった。
勇は、目の前に起きていることから目が離せない。
「白衣を着ているのが、保健医の柚木聖先生。それから、もう一人は君と同じクラスになる石井章君。俺は三年の渡辺純」
純は構わず、自己紹介を交えて説明する。
誰だって、こんな光景を見たら目が離せなくなるだろう。
【アレダ。アレガ標的ダ。殺セ、殺セ】
ふいに頭上のモノが、純と勇の存在に気付き、攻撃の手を伸ばす。
やはり、勇が標的か、と純は思いながら、自分と勇の周りに結界を張る。
勇を傷付けさせるわけにはいかないのだ。
掠れて不気味な声を拾った勇が、身を固くする。俺を狙ってる?何故だ?どうしてか、自分が標的だと言われたことに気付く勇。
アレは、母さんを殺したのと同じモノ?
攻撃は、純の結界に霧散した。
「っ?」
知らず、身を固めるだけでなく、息も詰めていたのだろう勇。
「君はちゃんと守るよ。大丈夫」
純は安心させるように、言葉を紡ぐ。
呪符とはか持っていないが、これも結界とかいうもののおかげなのか?と勇は純をみる。
「結界は別に呪符なしでも造りだせるんだ。俺と君を守る結界くらいなら、問題ない」
純はあまり攻撃が得意ではない。
呪符を用いて攻撃をすることも可能だが、今純が攻撃にまわるのは得策ではなかった。
ふと、秋人が純と勇を見る。絶え間ない攻撃にさらされている純の結界。純の力は強いが、受け身だけでは辛いだろうことは予想がつく。
一足飛びに、秋人は今までの場から離脱し、純たちの傍にくると、攻撃しているモノを切り払う。
「きりがない」
ポツリと呟く秋人に、純もたしかにと思う。
体育館の結界も、長く持つものではない。
アレの本体を攻撃出来なければ、意味のない攻防の繰り返しだ。
「アレの急所を突くのは簡単だが……アレの腐ったのがボロボロ落ちてこられたんじゃたまらん」
いつの間にか、聖と章も近くに移動してきていた。
秋人が動いたことで、純たちの状態に気付いたのだろう。
ああいうモノには核がある。その核さえ切り裂いてしまえば問題はないのだ。問題なのはその後である。核を切られたものが、腐りボロボロになる。上空に浮いているから、上から降って来られることになる。腐ったモノに触れても、人体に影響があるので、よろしくない。
とりあえず、章と純が二人で張った結界を、共有させ、大きな結界にして、全員が入る。攻撃の手は休まらないが、全く無意味だ。
「何とかするとしたら、火ですか?」
純が聖に問いかける。
燃やしてしまえば、腐ったモノは落ちてこない。
「あー、火な、火」
しかし、聖は火を扱う能力がない。他の三人も同じだ。
うまい具合に火をライターなんかで起こして、相手の核を切り裂ければ良いのだが、そんな術もない。
「あ」
章が口を開く。
「火の呪符、有ります」
と。呪符をうまく核に当てるように投げなければならないが、そこは術者の力の一環にもなる。
核を見破り、間違いのない正確さでそこを突かなければならない。
「俺が結界を張るよ」
そう言った純にお願いします、と章は自分が張っていた結界を解く。
純のみの結界に、四人が入り、章は外へ出る形だ。無防備に出て来た章が標的になるが、それは章自身が、再度自分のみに張った結界に阻まれて終わった。
「秀がいれば早かったんだがな」
聖がポツリとこぼす。章に異変があれば、すぐに動ける体制を取りながら。
「秀さん、炎使えますからね」
同じように体勢を取りながら秋人。
章の手から、呪符が放たれた。寸分の狂いなく、敵の核へと。
張り付いた呪符は、一瞬の間を持って燃え出す。呪符の効果が覿面に表れた。
【ガァァァァァァ】
吠えるモノは、炎に身を焼かれまいとするかのように、波打ち、飛び回る。
地上にいたアレの分身のようなモノが、空中の靄に取り込まれる。
炎は勢いよく燃えている。誰もが、これで終わりだ、と思った。
「っっく」
章が、呻いて膝をついた。
瞬間秋人が章の近くに動き、抱えて純の結界内へと戻る。
炎は、勢いをなくしはしたものの、消えてはいない。
章がまだ、気を失っていないからだ。それに、章が呻く前に見えた人形(ひとがた)。おそらくその人形が、章への衝撃を少しだけ和らげた。
何者かの介入、おそらくは、アレを使役している者。
しかし、こちらにも介入者がいた。次に起こったことは、短剣が空中のアレの核に突き刺さったことだ。
投げナイフと形容される、小型のナイフは、突き刺さった後、勢いよく炎を出して燃え出した。
「純、結界を張ってくれ」
ここにいるはずのない者からの声。
純は一瞬遅れるものの、声に従い、アレの周りを結界で囲う。
蠢いていたモノは、逃げ出せなくなり、余計に波打つ。が、第二波とも呼べる攻撃が、投げナイフの投げられたであろう後方から起こる。
確実に、炎はアレを焼き尽くした。
勇は、茫然と成り行きを見ているしかできなかった。
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