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君が消えた、夏 第二章 ③にしおりをはさみました!
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君が消えた、夏 第二章 ③
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あと、どのくらい、章といられるのだろう。
夜になって部屋に戻り、暗い部屋でボンヤリと考える。
こうして、考え始めて、どのくらい経ったのだろう。
あの男は、やって来ない。
来ないなら、来ないで。このまま静かにすごしたい。
無理だろう願い。
忘れてはいけない、あの男の言葉。
「次に来る時は、一緒に来てもらうよ」
あの声が、また自分を支配し始める。
どうあがいても、頑張っても、呪縛は解けないままだった。
けれど、鍛錬の時間を増やす為に、学校での生徒会長としての仕事は、きっちり終わらせられるようになった。
鍛錬の時間が増やしたかっただけじゃない。
章との時間を、増やしたかったんだ。
章と勇と三人でいることが増えた。
それが、今の俺の原動力になっている。
勇とも、気を緩めて共にいられるようになった。
だけど、この時間は、いるまで続けられるのだろう。
期限はわからない。だからこそ、突然この幸せを、奪われるのが恐かった。
今が幸せであると、思う。
今が幸せな分、とても怖い。そう思うんだ。
でも、自分から、彼らを遠ざけることなんて、できなかった。
いつか奪われるまで、そのギリギリまで、彼らとともにいたい。
章だけじゃない。勇も、秀も正も、それに純や太一や聖も。
一緒にいられる時間を長くしたい。こんな風に思う自分がいるなんて、思わなかった。
おかしくは、思われないだろうか。
他人に壁を作って、独りでいようとしていた自分が、突然周りといはじめるのは、おかしくはないだろうか。
それでも、彼らとともにいたいのだ。いたいから、こうして答えの出ない考えが、止めなく溢れる。
「弱いな」
自嘲する。
こんなにも、自分は弱かったのだ、と。
昔ここへ来た時に、秀と正に言われた。そのままでは、力が暴走する、と。
だから、章を守りたいなら、力について知るべきだ、と。
秀と正に諭されて、自分は力について知った。
それとともに、仲間がいる楽しさを、知ってしまった。
あの頃、章と二人だけで良いと思っていた、あの頃には、戻れない。
戻れないけれど、この暖かさを知ったことを、後悔しているわけではない。
どのくらい、あとどのくらい一緒にいられるかは、わからないれど。だからこそ、今を大切に生きたいのだ。
あの男に連れて行かれた自分がどうなるかなんて、わからない。
押しつぶされそうな不安を、今日の昼に見た章の笑顔が、勇の笑顔が、秀の笑顔が、塗り替えて行く。
今を大切に、生きよう。
いつくるかわからない不安は、今は蓋をして。
まだ、大丈夫。
きっとまだ、もう少しは一緒にいられる。
なんの根拠もないけれど。それでもその思いにすがるほどに、俺は弱い。
呪縛を解く術が、わからないままなのだ。
それでも、堂々巡りをする思考を、打ち切ってくれるほど仲間の存在は、とても大きいものだった。
大丈夫だ、と勇気付けられている気がする、彼らの笑顔。
焼き付けておこうと思う。
悲しい顔より、笑顔の方が、勇気をもらえるから。
この先どうなるか、全くわからないから、だから、俺に勇気をください。
すがる仲間が、できたこと。俺を受け入れて、笑ってくれる仲間ができたこと。
絶対に俺は忘れないから。
だから、皆も俺のことを、忘れないで欲しいなんて、思っても良いですか。
俺がいなくなったら、きっと探し出してくれると、すがっても良いですか。
俺は、弱いから。だから、きっと、助けてくれると、信じている気持ちだけは、強く持ちたいと思う。
「一緒に、ずっと一緒にいたい」
だから、今泣いてしまっているけど。朝には元気な顔で皆に会うから。
今だけ、今だけだ。
何度も何度も部屋へ戻る度に、こんな風になってるけど。
皆がくれる優しさに、どうやって返したらわからなくて。ただその優しさをもらうだけの俺だけど。
それでも、傍にいさせてくれる仲間の優しさが、本当に嬉しい。
だから、だからもう少しだけ。
甘えていても、良いですか?
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