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72にしおりをはさみました!
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72
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「最低......」
結局ソファーはドロドロに汚れた。剥ぎ取ったカバーと共に風呂場に運ばれて身体を洗ってもらってから、カバーは洗濯機に任せた。洗い替えのカバーもあるのだが、めんどくさいと言って掛けてくれず、父さんの寝室に連れてこられた。ベッドに転がって枕元に起きっぱなしになっていた本を何気なく開く。
「なにが最低だよ。散々よがってたじゃねぇか」
「ん......もぉ無理だからね」
「触ってるだけ」
いやらしい手つきで腰から尻にかけて撫でられるが、確かにそれ以上はしてこなかった。
「ねぇ、これロシア語?」
「おぉ。かの有名なドストエフスキーの罪と罰」
「日本語なら読んだことあるけど......父さん、ロシア語まで読めるの?」
「辞書片手にぼちぼちな。日本語訳は俺もよく読んだからまあまあ読める。やっぱり原文で読んでみるのは面白いし、いい暇潰しになる」
「......さっぱりわかんない」
やっぱり父さんはすごいと思う。俺なんかよりはるかに知識も語学力もあって憧れる。俺の手からひょいと本を取り上げると、栞が挟んであったところから読んでいるようだった。相変わらず、片手は俺の尻を撫で回しているのだが。
「そうだ。この間、偶然にも轟さんに会ったんだよ」
「轟さん?どこで」
「東京駅で。まじでバッタリ。最初声をかけられたんだが誰か全然わからなかった」
この人の多い東京でそんな偶然があるとは驚きだ。
「出張帰りだとか言ってたけど、スーツを着て七三分けは変わらないのに、なんかぼやーっとしてるんだよな。くたびれたオッサンの典型みたいな」
「それで?轟さん、元気だった?最近またイベント離れてたから会ってないや」
「おまえのAV観たってよ。おまえの話してる時だけ目に力が宿っていた」
「へぇ」
「人混みの中、いかに姫が素晴らしくいかにエロティックかというのを熱く語りだしたから途中で止めたけどな」
「あははっ」
「まぁ、またイベント出るなりして元気な姿見せてやれよ」
「うん」
それよりも先に、また電話しようと思った。でも、今日は父さんが離してくれそうにない。再び視線は本に戻っているのに、俺の腰から手を離さないのだ。払い除けるのは簡単だけど、小説を読む父さんの横顔が見とれるほどかっこいいのと、腰が温かくて気持ちいいのとで俺自身が離れがたかった。
「どうした?」
少し擦り寄ってみたりして。昔から変わらない父さんの匂いを吸い込んで、何もないけど、と答えておいた。
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