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07にしおりをはさみました!
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07
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ただいま巡回中。
一階、二階ともに校内で“行為”に至っている生徒は誰もいなかった。どうせ三階にも四階にもいないのだろうと思うと足取りは自然と緩慢になる。
加えて俺がこうも投げやりなのは、
「うーん、特に異常はないっすねえ」
「あるだろ、てめえの頭に」
――何故か来栖と手を繋いでいるこの変な状況にある。
指先が絡んでいるだけなのにこれがなかなかほどけない。そして最悪なことにさっき散々抵抗したせいで体力がほとんど持っていかれたという不幸っぷりを発揮している。倦怠感によって打開策を練ることすらままならない。何もかもクソったれだ。
「別に手ぇ繋ぐぐらいいいじゃないっすか~。キスしてるワケじゃあるまいし」
――それならキスの方がマシなのだが、と口にするほど馬鹿ではない。
「手なんか繋いだとこで何にもならねえだろうが」
「え~。ドキドキしないっすか?」
「誰が誰にドキドキすんだよ」
「センパイが俺にっすよ」
「ハッ」
「鼻で笑われた!?」
指をもぞもぞと動かして小さな抵抗を続ける――と、来栖は繋がった手を自分の口元へと引き寄せた。あ、と思ったときには手の甲に柔らかな感触が落とされる。文句のひとつも言ってやる暇がなかった。わざとらしいリップノイズが響きわたる。
「俺はいつだってセンパイにドキドキしてますけどね」
来栖の声音にはどことなく甘さが孕んでいた。手の甲を凪ぐ生暖かい吐息、耳を擽る低音、やけに真剣な双眸に射抜かれた俺は、不覚にもドキリと――。
「しねえよクソ野郎」
「いったぁー!!」
どこの腐女子の脚色だよと思いながら来栖にローキックを食らわせる俺の頭は今日もウイットがきいている。果たして性癖も正常だ。
あの人からのアドバイスのひとつに、『フラグ(未だに何を指すのかよく分からないが、甘い雰囲気になったら手遅れらしい)は相手の骨ごとへし折れ』とあったので実践してみたが、なるほど効果覿面、繋がっていた手も離れたようだ。自由とはなんて素晴らしいのだろう。
「うう、ヒドイっす……」
「自業自得だ。さっさと見回り終わらせんぞ」
「オレは鬼畜なセンパイも好きっすよぉ……」
「うっせえ」
「ぎゃん!!」
――心身ともに疲れきった見回りだったが、違反者がいなかった分だけマシと言うものか。
鬱陶しく絡んでくる来栖を振り払いながら、俺は今日の晩飯に想いを馳せるのだった。
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