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「はぁっ…はぁっ…」
「…大丈夫か?」
ぐったりとした身体をベッドに投げ出して、息を整えていると、浅野がベッドサイドに手を伸ばして、ティッシュを手に取った。
「はぁ…あ、自分でやるから…」
俺がティッシュを奪おうとすると、浅野はその手をサッとかわした。
「俺がやる」
浅野は、コトが終わった後で、汗やら、体液でベタベタな俺の身体を優しい手つきで手際良く拭いて行く。
「浅野って本当…イケメン過ぎてムカつく」
初めてした男相手のSEXなのに俺が思い出す限り、今までで最高のSEXをアッサリとやってのけたり…
「でも、好きなんだろ?」
そんな風に自身満々な所も…
「あぁ好きだよ…悪ィか…」
そう言いかけると、浅野はベッドに倒れ込み、俺の肩を抱き寄せた。
「はぁ…ヤバイ」
「…浅野?」
そう言えば、最中にもそんな事言ってたよな?一体何がヤバイんだ?
「俺、もう女抱けないかも」
…………!?
「…ま…マジ?」
「あり得ないと思うだろ?今まで付き合ったどの女より、お前の方が可愛いと思うなんて…」
だめだ。自惚れちゃだめだ。
「…眼科行った方がいいと思うぞ」
「顔、にやけてるけど?」
浅野は俺の頬をムニムニと摘まみながら、そう言った。
「う…うるへー。もう寝る」
俺は、にやける顔を隠す様に浅野に背を向けた。
すかさず、浅野の腕が、背後から俺を抱きしめる。
「おやすみ…」
こんな日が来るなんて、思わなかった。浅野に好きだと伝え、好きだと言われて、身体を重ね、抱きしめられて眠りにつくなんて。
だけど…今の俺達の関係に名前をつけるとしたら、何と呼ぶのだろうか?
「…なぁ、浅野」
「んー?」
「俺たちってさ…その…どんな関係?」
今夜、ただの同僚じゃ無くなったのは確かだ。
一線を越えてしまったこの関係を浅野はどうするつもりなんだろうか?
「恋人だろ」
浅野が、俺の頭に顔をうずめながら、そう呟く。
「…うん」
俺は回された浅野の腕にそっと触れた。
生まれて初めて、心から好きになった相手と、恋人になれた…
「おやすみ」
1%の可能性が、100%の確かなものに変わった夜。
俺は、朝まで浅野の腕の中で眠った。
ーピンポーン、ピンポーンー
「…ん…」
「ん…」
なんか、遠くで鳴ってる…
ベッドの上、モゾモゾと身体を動かして、ぼんやりと見上げると、浅野も、同じくぼんやりと俺を見下ろしていた。
「…おはよ」
「はよ…つか誰だこんな朝っぱらから」
浅野は俺の額に小さくキスをするとベッドから抜け出すと、シャツを羽織りながら気だるげに、部屋を出た。
「………」
浅野の出て行った広いベッドの上、ゴロンと身体を移動して、浅野の体温の残る布団を抱きしめると、仄かに香る浅野の匂いに包まれる。
「…幸せすぎる…」
幸せ過ぎて怖い。
人間って本当に不思議な生き物だ。
思いが実ったら実ったで、今度はその幸せがいつまで続くのか、不安に思ってしまう。
特に、障害の多い同性同士の恋愛なら尚の事…
「ん…あれ?」
何か今、玄関から女の声が聞こえた気がした。
『祐介…お願い…』
聞き間違いじゃない。途切れ途切れに聞こえて来たのは、やっぱり女の声だった。
うそだろ…
付き合って一日も経たないうちに、これって、ものすごくヤバイ状況か⁉︎
「…」
条件反射とでも言うのだろうか?頭から布団をかぶり、息を潜めた。
すると…
ーチリン♪ー
ん?チリン♪…?
ーニャ〜♪ー
ん?ニャ?…
何か今、胸の上辺りに、重みを感じるんだけど…例えるならば、昔実家で飼ってた猫が、寝てる俺の布団の上に乗っかって来たみたいな、丁度そんな感じ。
恐る恐る布団から顔を出すと…
「……」
「ニャ!」
目の前には、やっぱり猫がいた。
毛並みの良い、フワフワのメインクーン。
「可愛いなお前、どっから来たんだ?」
優しく頭を撫でると、ペロペロとその手を舐められた。
「ははっ、くすぐったい」
起き上がり、猫を抱き抱えると、
ーギィー
少しだけ開いていた扉が大きく開いた。
「なぁ、浅野コイツどうし…」
たんだ?と、言いかけた俺の言葉は、そこで途絶えた。
なぜなら部屋に入って来たのは浅野では無く…
「あら。ごめんなさい、お邪魔だったかしら?」
え…?
「あ、あの…えーと…?」
どちら様ですか?この和服美人な熟女さんは?
「オイ!勝手に寝室覗くなって」
後から慌てて浅野がそう言いながら入って来た。
「あの、浅野…もしかして…」
もしかしなくても、彼女は…
「悪い、篠原。俺のお袋」
浅野は、しまったと言わんばかりに額を押さえながら、そう言った。
あぁ…やっぱり!?
「あ、あの、訳あって1週間だけ居候させて貰ってます、同僚の篠原です!」
俺は慌てて大きく頭を下げながらそう言った。
「母の桜です。それにしても…随分と今までの娘とは毛色の違う彼女さんね〜祐介?」
お母さんは浅野に向かってニコニコと笑いながらそう言った。
「い、いや!俺は只の同僚で…」
浅野はきっと俺達の事知られたく無い筈だ。
昨日の今日こちら側に足を突っ込んだばっかりで、まさかの親にカミングアウトなんて、俺だってまだなのに、人生において荷が重すぎる。
だから慌てて、割って入った。
「あら、ごまかさなくて良いのよ。お母さん応援するわ〜」
か、軽い!?
「はいはい。応援ありがとうございます。ほら、さっさと帰った」
浅野はそう言うと、お母さんの体をくるりとドアの方へ向け、背中を押した。
「じゃあ、篠原さん、祐介をよろしくねー」
桜さんは俺の方を振り返り、ホホホ…と笑ながら渋々出て行った。
「……」
あまりの出来事に呆然としていると、見送りを済ませたらしい、浅野が部屋に戻って来た。
「あ、浅野、あの…」
「悪いな。びっくりしただろ?何か、店の女の子達引き連れて旅行に行くから4、5日ソイツ預かって欲しいんだと」
ソイツと言われた猫に目をやると、相変わらず俺の腕の中でゴロゴロと喉を鳴らしていた。
うん。猫は可愛い。
それは良いんだ。俺が言いたいのは…
「否定して良かったのに。俺の事…」
別に、自分のベッドに男がいたって同僚にベッドを貸したって言えば済む筈だ。
それなのに、浅野は一言も否定しなかった。
「お前こそ否定しなくて良かったのに」
浅野はそう言って、ベッドに座ると、俺の腕の中の猫の顎下を擽りながら、そう言った。
「するだろ普通…」
「お袋はそう言うの気にしない人だし、それに、俺が否定したく無かったんだ…」
「浅野…」
浅野の手のひらが今度は俺の頭を撫でる。
「お前も、本当は否定しないで欲しかったんだろ?」
「それは…そうだけど」
そりゃあ、願望では、そうだったらいいなとは思う。自分の事を恋人だと、堂々と言って貰えたら勿論嬉しいに決まってる。
だけど現実には、同性同士の恋愛を、認めて貰える、しかも親になんて、あり得ないと思ってた。
だから、俺は否定したんだ。
自分の願望を隠して…
「俺には、本心でいい。ありのままの篠原でいればいい」
ありのままの俺…
拒絶される事を恐れて、本心を隠す事に慣れ過ぎた俺を、浅野は全て認めて、受け入れてくれた…
「はは…あはははは」
何だか笑えて来た。
「篠原?」
突然笑い出した俺を不思議そうな顔で浅野が見つめる。
「浅野って本当…イケメン過ぎてムカつく」
「でも、好きなんだろ?」
「ああ。何かこのくだり、すげーデシャヴ」
「気のせいだろ」
笑いながら浅野が、俺の隣に寄り添い、肩を抱く。
「ニャ」
ふと、腕の中の猫が小さく鳴いた。
「あ、そう言えばコイツ、名前何ていうの?」
「香織」
「へえ…何か、すげー聞いた事ある名前な気がするんだけど」
「それも、気のせいだ」
俺達は笑い合って、互いに唇を寄せた。
幸せ過ぎて…
もう‘怖く,はない。
幸せ過ぎて…
とにかく幸せだ。
ーendー
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