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18歳以上ですか?
ー其のヨンーにしおりをはさみました!
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ー其のヨンー
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「遅いな~」
渋滞でもしてるのかな?
いつもの時間に車が迎えに来ない
携帯も繋がらないし困ったぞ
もう校門で1時間以上立ったまま迎えの車を待ってるのに来る気配が全く無い
「う~ん」
お金はあるから電車で帰ろうかな
電車は乗った事が無いけど、きっと帰れるはず
うん、帰れるさ
仕方なく歩き出し、駅へ向かおうとした
確か・・・・こっちだったよね?
毎日車だから駅がどこにあるのかわからないけど・・・みんなが歩いている方向に行けばきっとあるはず!
「あれれ?」
みんなそれぞれ散らばってしまった
どうしよう・・・・・う~ん
とりあえず適当に歩いて、わからなかったら誰かに尋ねてみよう
「・・・・・・・・・・・・・・・うそん」
マジでわからないしっ!
と言うかここはどこなの?
駅もないし人も少ない
そろそろ夕方だし寒くなって来た
「あっ、誰かいた!」
公園のベンチに誰かが座ってる
あの人に聞かなきゃ俺は死ぬかも知れない
間違いなく死ぬ
急いでベンチに駆け寄り、声を掛けようとして思わずじっと見つめてしまった
そう言えばお腹空いたな・・・
この人の食べてる物って何だろう
すごく美味しそう
「何?」
「えっ、あっ・・・あのあのっ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
驚いた
めちゃくちゃ綺麗な顔してるけど・・・男だよね?
胸ないし・・・・・でも綺麗な人
「あはっ、その食べている物は何ですか?」
「は?」
「あはは・・・・・は」
思い切り引かれたみたい
と言うか駅の道を聞かなきゃなのに!
動揺していると、突然お腹が鳴ってしまった
「あう・・・・・」
「待ってて」
「うん」
何だろう
もしかしてそのまま消えちゃうとか?
そ、それはないよね・・・・・でも、もし戻ってこなかったら俺はここで死んでしまう
ベンチに座り、うっすらと明るくなって来た月を見上げた
「ほら」
「えっ?」
突然、差し出された物は美味しそうな物
俺が食べたかったやつだ
「ありがとう!いくらですか?」
「いいよ」
「でもでも・・・・」
「いいから」
「・・・・・・・・・・・じゃ、ありがとうございます」
買い食いは禁止されていたけど、どうしても食べたかった
見つかる事もないしね
だって、こんな時間に公園に来るようなクラスメイトや先生はいないし
「いただきます」
初めて食べた美味しそうな物はとても美味しかった
「おいしいっ!」
「そっか」
「うんうんっ!初めて食べたけどすごく美味しい」
「へぇ・・・・初めて・・・ね」
「ん?」
「その制服を着ているお坊ちゃまなら当たり前か」
「んん?」
「じゃ~な」
「えっ、待って!」
「何?」
「・・・・・・・・・・あのあの」
「?」
「駅は?」
「駅?」
「あはっ、今日は迎えの車が来なくて・・・・だから」
「どこの駅?」
「えっと・・・・・どこだろう」
駅の名前なんかわからないしどうしよう
「・・・・・・・・・・・・・・家はひばりが丘?」
「すごい!当たり!!なんでなんで??」
「クスッ」
「ん?」
「そこは金持ちしか住んでいない場所だから」
「そうなの?」
「ついでに言わせてもらえれば、お前はそこでぬくぬくと育った世間知らずのお坊ちゃま」
「むっ」
「駅すらわからないし、おまけに迷子」
「そ、そうだけどさ」
言われている事は間違ってはいない
「あの・・・・ごめん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「俺、何もわからないんだ・・・・・こうして外を一人で歩いた事も無いし、みんな俺と同じように車で移動してると・・・・」
「あそ」
ど、どうしよう
怒らせちゃったかな
「あの・・・・気を悪くしたのなら謝るよ」
「別に・・・・今時お前みたいな奴もいるんだと関心していたんだよ」
「えっ」
「ちなみに俺の言っている関心は興味を持つ方の関心な」
「えと・・・・うん」
ん?
感心されてるんじゃないのかな?
そんな感じがする
「ここから駅までは遠いから送ってやるよ」
「へっ?」
「イチゴが落ちるぞ」
「ああっ!」
慌ててイチゴを食べながら、顔を見つめた
・・・・・・・・・笑ってる
すごく綺麗な笑顔
「あのあの、俺は燕羽」
「俺は翔だ」
「よろしくねっ!」
「今日だけな」
「えー、どうして?」
「俺とお前とでは品種が違うんだよ」
「人間じゃないの?」
「あ?」
「あ、あはは・・・・・」
「犬に例えるのなら、お前は優秀な血統を受け継いだ犬で立派な血統書付き、俺はその辺の野良犬が勝手にやって出来た血筋すらわからない野良犬」
「・・・・・・・・・・・・・そんな事ないよ」
「お前はそう思っていても、そうなんだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかんないよ」
「俺達がこうして知り合って仲良くなりたいと思っていても、お前のブリーダーが許さないって事」
「関係ないよ!」
「そういう言葉は、お前が独り立ち出来てから言え」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
人間をそんな言い方で差別なんかしたくない
でも・・・・・・それを言うのはいけないような気がした
「食べたら行くぞ」
「うん」
何だかすごく悲しくて、急いで口に押し込み涙を拭いた
「クリームが付いてる」
「へ?」
そう言って唇を指で拭いながらその指を舐めた
「あああああ」
「何?」
「な、な、な・・・・・・」
「俺、甘いの大好きだし」
「そ、そうなんだ」
「バイクはそこにあるから」
「えっ?」
バイク??
「あの、免許」
「持ってるよ」
「えと・・・・いくつ?」
「17」
「えっ!俺と同じ??」
「だな」
「嘘みたい・・・・・バイクって17でも乗れるんだ」
「まぁな、かぶれ」
「うん・・・・ん?・・・・あれ?」
どうやってかぶるんだろう
「ったく」
「ごめん」
翔はヘルメットをかぶせてくれた
少し息苦しいけど、なんだかワクワクする
「しっかり掴まってろよ」
「わ、わかった!」
でも・・・・・・初めて乗るバイクは想像以上に速かった
「ひぃぃーーーー!」
「気持ちいいだろ?目を開けてみろよ」
「怖いよ・・・・・」
「勿体無い生き方してるな~」
「ううっ・・・・・」
だって、怖い物は怖い
しかも直接体に風があたるし
ん?止まった・・・?
ずっと目をかたく閉じていたからすごく怖かった
でも、今は止まってるし素直に開けてみた
「綺麗・・・・・」
「だろ?」
「うん!」
すごい!
夜景がすごく綺麗
何だかよくわからないけど感動すら覚えた
「で、着いたけど」
「あっ・・・・ほんとだ」
見覚えのある道だった
でも、不思議
家から夜景なんか見た事も無かった
こんなに綺麗だと思わなかったし、当たり前の風景の一部でしか無かった
「あれ・・・パトカー?」
「だな」
嘘・・・・
あそこは・・・・・・でも・・・
「どうした?」
「そこが俺の・・・・・どうして?」
「行ってみよう」
「怖いよ」
「いいから来い」
腕を掴まれて、朝出た家の前までやって来た
やっぱり家だ
すごくたくさんのパトカーと救急車そして人混み
「何があったんですか?」
翔が知らない人に声を掛けていた
「ここのご主人が奥さんと使用人を猟銃で撃ち殺して自分も自殺をしたらしいぞ」
「・・・・・・・・・・・・・えっ?」
「息子もいるらしいけど、学校に行っていたから助かったみたいだな」
「そうですか」
「でも、可哀相に・・・・・何でも新しい事業に失敗して多額の借金を背負う事になったってさ・・・だけど家族以外の人間も道連れにしなくてもな~」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何が何だかわからない
何を話しているのかもわからなくて、すごく気持ち悪いし耳鳴りがする
立っているのもやっとで、目の前が真っ暗
翔は倒れそうな俺に、自分のパーカーを着せてフードをかぶせて顔を隠してくれた
その後は覚えていない
覚えているのは赤いパトカーの明かりと、たくさんの人達
そして俺は犯罪者の息子になったと言う事だった
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