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きっと、知っているにしおりをはさみました!
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きっと、知っている
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「…とにかく、今日こそはちゃんと
俺の質問に答えろよ」
今まで会っても、リーの仕事の都合上などで
すぐに帰ってしまったため、俺の質問に
答えてくれなかったリー。
今日はその質問に答えるつもりがないのなら
もう会わない、と言って来たから…
きちんと納得するまで帰れない
「いいよ。って言うより、俺が春について
知ってることを全部話した方が良いんじゃない?」
クスッと微笑む時に、
少し伏せ目がちになる仕草が…
あいつと似ていて驚いた。
「じゃあ、まず…この子のことかな。」
リーが鞄から出したのは、
ファイリングされたある新聞記事。
小見出しには大きく
[全日本パティシエ選手権優勝は伝統校チーム]
と書かれ、
…まだあどけなさの残る男の子2人が、
肩を組んでいる写真
右の人物は栗色の髪に人懐っこそうな
くしゃくしゃの笑顔、片手にトロフィーの
ようなものを持ち、高く掲げていた。
左の人物は黒髪短髪…そして控えめに微笑んでいる。
……俺だ。
「やっぱり…知ってたのか」
俺が日本で最後に優勝した大会。
フランスに来る前…15のときだ。
「春は本当すごいね。ブリュンティエール
日本校はタダでさえ倍率が高いのに首席入学…
さらに入学した年から日本中の
ジュニア大会を独占…さすが、
天才ショコラティエだ。ああ、それと」
トンッと、写真を指で示すリー
…右の人物
「彼ね…会ったよ。」
会った?
会ったって…、
「渡辺真クン…日本での春の…
ここで言うシェールだろ?」
渡辺 真
久しぶりに聞いた、名前
思わず、息をするのも忘れそうになる
リーはそんな俺を構いもせず、話を始めた。
「日本で仕事があったんだ。
ブリュンティエール日本校で。そしたら
たまたま彼に会った。新聞とかで、知っていたから…
君のことを聞いたんだ。そしたら、ねぇ?」
肘をつき、見下すように嘲笑うリー
リーは、知ってる。
[俺が、真に、何を、したのか]
これ以上、真琴のことは聞きたくなかった
夢の中の…あいつの声がこだまするから。
「裏切り者」
そう、言ってる。
忘れたい
けれど、忘れてはいけない
フランスに来てしまった以上
俺はあいつを背負いながら生きていかなきゃいけない
その覚悟で、来たはずなのに…
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