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アメリカに、来ない?にしおりをはさみました!
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アメリカに、来ない?
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すぐにその表情は消え、リーは鞄から
何かの資料を取り出した。
「これ、知ってるでしょ」
バサッ、と乱雑に机の上に投げ込まれた
パンフレットのようなものには
【クローフット・アカデミー】と
大きく赤く派手な字で書かれていた。
「知ってるも何も…クローフットは有名だろ。」
クローフット・アカデミーは
アメリカにある製菓学校だ。
ブリュンティエールは伝統校として古くからあり、
日本校をはじめヨーロッパ圏には分校がある。
それに変わってクローフット・アカデミーは
ここ数年、新しく作られた学校だけれど
パティシエ界に彗星の如く現れ、現役生
OB.OGと共に各世界大会で優勝者を出すなど
今一番勢いに乗っている
でも、なんでこれを?
そう思いリーを見ると、リーは淡々とこう言った
「今、ここで働いている。誘われたんだ。」
「…へぇ。じゃあ今アメリカにいるんだ。」
アメリカ、ね…
リーの腕は確かだ。だったらココに教師として
誘われても何もおかしくはない。
「来ない?アメリカ」
「…は?」
家に遊びに来ないかくらいの軽いノリで言われる
アメリカに…来ないかだって?
なんでリーがそんなことを言うのかわからず、
無意識に眉間を寄せる
「俺は本気だよ。あんな所にいたら、
春の才能はくすぶる。もったいないよ。
クローフット・アカデミーは今、
レベルがうなぎ昇りだ。世界が注目してる」
「いや、何言って…」
「俺なら、
春をもっと高い舞台に連れて行ける」
高い、舞台…?
心臓が大きく跳ね上がった
────1番、欲しいかったものだろ?
心の中の『俺』が囁く
そう、そうだけど…
「学長に話はしてあるんだ。引き抜きたい子が
いるって。…今すぐじゃなくていい、
でも3月中しかヨーロッパにはいないから
それまでに答えを出せよ?」
そこでようやく気づいた
あれ…どうして俺は、今この場で
行かないって、言わないんだ?
ブリュンティエールがある
ルイもいる
ゼンもいる
エリック、も……
[また、裏切る?]
…あぁ、また迷ってる俺がいる。それは、
その選択肢も『考えてしまった』ということ。
俺はフランスに来てから
見て見ぬ振りをしていたんだ。
自分の中の…一番奥にいる
最低で最悪な汚い俺を。
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