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魔王ユキ活動記録(3)にしおりをはさみました!
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魔王ユキ活動記録(3)
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エクソシストを探す前に、まず14号と接触することにした。エクソシストよりも悪魔の方が断然探しやすいからだ。全ての悪魔のおおよそ居場所は魔王…つまりユキが持っている地図で把握できるようになっているのだ。
14号とエクソシストが通じているのであれば、2人はどこかで必ず会うはず。14号を追跡してその現場を押さえれば、エクソシストを攫うことができるというわけだ。
ユキから地図を借り、14号のいる場所に行ってみると…なんとまさに、エクソシストと会っているところだった。
とっさに物陰に身を潜めて様子を窺う。
「なんじゃもう…わけのわからんやつじゃなお前は。結局お前は何がしたいんじゃ」
会話が断片的に聞こえてくる。14号は声が大きいからかはっきり聞こえるけど、エクソシストの方はところどころ聞こえるだけだ。
なんとなく気になって、隠れたまま続きを聞いてみることにした。
「……好きなんだ」
「ふむ。恋というやつじゃな。それ系はわし苦手じゃよ!」
「僕も苦手だよ。自分勝手な人間には向いてないんだよ」
「…ん?わし今…けなされた?」
「失礼するぞ」
2人の前に姿を現した。
話の内容があまりにくだらなかったから、さっさと任務を遂行することにしたのだ。早く帰らないとユキに怒られるし。
「誰これ…」
ぽかんとしているエクソシスト。14号はのんきに手を振ってきた。
「おー!お前、魔王の息子じゃろ!大きくなったのー」
「14号、そこで何をしている」
14号はふくれっつらになった。
「なんじゃあ、いくら魔王の息子だからって、悪魔としてはわしが先輩じゃろ?もっと敬意を持って話さんかい」
「俺は魔王の命令でエクソシストを捕まえに来た。お前、エクソシストと通じているらしいな。どういうつもりだ?」
「だから、もっと敬意を持つんじゃ!」
ぎゃあぎゃあ言ってる14号を無言で睨みつけると、14号は渋々答えた。
「むむぅ…たしかにわしはエクソシストとつながりがあるけども…別に、つながっちゃいけないなんてきまり、ないじゃろ?何かお前らに迷惑かけたかの?」
「エクソシストは悪魔の存在を脅かす敵だ。一人残らず始末する必要がある。エクソシストに協力する悪魔も同じだ」
「えー?別にわし協力なんてしとらんし」
「とにかく、そいつは連れて行く。お前には追って沙汰があるから、大人しく待機していろ」
「えっ…いや、待つんじゃ!そいつはだめじゃ!」
14号を無視し、エクソシストに近づく。エクソシストは全く戦う気配がない。これなら簡単に捕まえられそうだ。
全身を観察すると、どうやら頭の中に魂が存在していることがわかった。
ひたいに手を伸ばし、頭につっこもうとしたところ、14号に腕をつかまれた。
「待てと言ってるじゃろ!関係ない人間を巻き込むなんて…わあ!」
14号はとても弱く、ちょっと力を向けただけで簡単に倒れた。
改めてエクソシストに向き直ると、エクソシストは冷めた目で俺を見ていた。
なんだか俺だけがやる気まんまんみたいで腹が立つ。俺だって、ユキのわがままで仕方なく動いてるだけなのに。
「お前、抵抗しないのか?」
「うん。しない。君は何をしに来たの?」
「お前を捕まえに来た。悪魔の世界に連れて行き、エクソシストに関する情報を吐いてもらう。逆らえば殺す」
「なるほど」
エクソシストは目を閉じた。
大人しく連れ去られる気か。こいつ、何を企んでいる?
…まあ、その辺はユキが考えればいいことだ。俺の仕事はこいつを連れてくるだけ。
俺はエクソシストの頭に手を入れて魂を掴むと、そのまま悪魔の世界へ移動した。
悪魔の世界に戻ると、もう夜になっていた。急がなくては。
エクソシストはひとまず牢屋に入れておき、ユキの寝室まで全力で走った。
「ただいま…っ、戻りました…」
息を切らしながら勢いよく扉を開けると、ベッドに寝転がったユキがにこっと笑った。
「おかえり、マオくん」
「エクソシストは無事捕まえました。牢屋に入れてますので、また明日話を聞いて下さい」
「んー」
ユキは寝転がったまま、天井のほうに手を伸ばした。
「どうしました?」
「手、引っ張って起こして」
「はい」
ベッドの上に乗り、ユキの体をまたいで手を自分の方へ引っ張ると、ユキはそのまま正面から抱きついてきた。
「えへへ。おかえり」
「それさっきも聞きました」
「マオくんが無事に帰ってきてくれてよかったな〜って思って」
「はあ、まあ」
「魔王になってから、マオくんがずーっとそばにいたから、一日いないだけで、寂しくなっちゃって」
ユキに強く抱きしめられる。
「…あなたは、人間界に何を置いてきたんですか?」
「え?」
「俺は代替品なんでしょう」
「マオくん…?」
「寝ますよ」
ユキの体を引き離し、電気を消して布団の中に潜り込んだ。
するとユキは、俺の胸の上に頭を乗せて横になった。
「マオくん、僕の人間界での記憶は、なくなっちゃったんだ。今の僕にはマオくんしかいない。僕を見捨てないで…」
「記憶が戻ったら、どうなんですか」
「どうって…」
「記憶が戻ったら、今度はあなたが俺を見捨てる番です」
「そんなことしないよ」
「しますよ、あなたは」
ユキははっきり覚えてないようだが、俺はよく覚えている。
ユキを人間界につながる穴へ落とそうとした時、ユキは「あくまさん」に会いたがっていた。
「あくまさん」はきっと、記憶をなくす前のユキの心の拠り所だ。それが消えてしまったユキは、無意識に新しい依存先を探し、俺に目をつけた。
「お願い、マオくん。ずっと僕のそばにいてよ」
ユキは頭を胸に乗せたまま、俺の手を握った。
「…別に、いなくなるなんて言ってませんけど」
「ほんと?」
「記憶が戻れば、きっと俺は不要になります」
「そんなこと…」
「俺だってここしか、あなたの隣しか、居場所がないんです。あなたにとっては誰かの代わりでも、俺には本当にあなたしかいないんです」
「……」
「責任取れますか?」
ユキは布団の中でもぞもぞと動き、俺の体の上に全身を乗せた。そして顔だけ上げて、俺を見下ろした。
ユキの純粋な目が、俺を突き刺している。
「僕、マオくんのこと大好きだよ」
「そうですか」
「マオくんは僕のこと、嫌い?」
「死ねばいいのにと思ってます」
「あはは、そっかぁ」
頭を上げて、そっとユキの唇に口付けた。
「おやすみなさい」
「うん。おやすみ!」
おわり
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