アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
1にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
1
-
元彼の結婚式に出席した。
異性であれば、それこそ結婚したであろう相手だ。
息吹は男。
元彼も、男。
でも、よかったな仁史。
家庭も子どもも、普通を手に入れる。
結婚式も披露宴も、息吹は心穏やかに見ていた。
だって俺は仁史の幸せを願っているから。
「お父さん、お母さん。孫の顔を見せられなくてごめんなさい」
花嫁の手紙でそんな感傷は吹き飛んだ。
咄嗟に元彼の顔を見た。
仁史はただ幸せそうに、妻となる女性を見守っていた。
花嫁は生まれつき心臓が弱いこと、それでもここまで成長できたことへの感謝を述べているが、もう息吹は聞いてはいなかった。
なんだよ。
それなら俺だってよかったじゃないか。
叫びたくなる衝動を抑え、それからの記憶は曖昧だ。
披露宴の見送りのときはお祝いを言えた、と思う。
二次会を断り、ふらりと駅までの道を歩いた。
バスで10分ほどの距離は歩いたらたぶん40分くらい。高ぶった気持ちを落ち着かせるのにはちょうどいい時間のはずだ。
このまま帰りたくない、だって、泣いちゃうかもしれないでしょう。
ひとりは、さみしい。
ああ、もう歩けない。
――仁史、ごめん、俺、祝福できない。
そう思った瞬間、柄にもなく涙が零れて、ごしごしと袖で擦ると足が止まる。
「大丈夫ですか?」
覗き込んできたのは見知らぬ男で、でも結婚式に出るような服装で直観した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 40