アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
8にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
8
-
「なにより、生活ですから。それまで生きてきた過程の違うふたりが一緒に暮らす。その時点で夫婦ですよ。子どもがいなくても。……でもそれは僕の意見です。それをゴールと思う人にとっては、ゴールなのでしょう」
「……うん」
「もう少し話してもいいですか」
「うん」
「僕は誰かを愛したことはないし、愛されたこともないです。それを前提として聞いてください」
恥じるように掠れた声に息吹の息が詰まりそうだった。
「息吹の子を産めないから別れるという選択をしたのは、息吹の元彼さんたちです。村野さんの子を産めないから別れるという選択は、息吹の決断です。僕から見れば、全くの別物。結末は同じでも、そこに至るまでにそれぞれの理由があるはずですよ。一括りにするのは失礼です」
ぱちんと脳裏で何かが弾ける音がした。
「息吹の言うことは、あまり、その……聞いてて気分がいいものではありません。女性は子どもを産むだけではありませんから。それなら、子どもを産めない男はどうすればいいんですか」
「ごめん」
「だけど、息吹自身がそれを思うことを、否定しないでほしいです。思ってしまうのは仕方がないから。……あまり自分を責めないでください」
自分の中でもどこか違うのではないかと思いつつ捨てられなかった矛盾が、居場所を許された気がした。
由正、あんたやっぱり、俺の神様だよ。
「あんたは不自由だと思ったけど」
運ばれてきた前菜に箸をつける。
「あんたは自由になるために選択肢を増やしていってるんだね」
息吹のことも切り捨てなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
29 / 40