アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
-
冷たい雫が顔に落ちる
一粒、二粒、顔に落ちる
やがてその粒は大きくなって涙のように流れ落ちる
「楓!雨だぞ」
「んっ・・・」
「お前は相変わらずどこでも寝れる奴だな」
「雨だね」
「そう言ってるだろ、行くぞ」
「うん」
葵に起こされて走った
雨はどんどん激しくなり足を止めるしかなかった
「仕方が無い、ここで小降りになるまで待つか」
大きな楡の木の下で足を止めた
ー楓様だ、お声をかけないとー
ー僕が先だよ、久しぶりの楓様だしー
うるさい
何が楓様だ
「ここは嫌」
「だな、じゃあそこか」
「うん」
時計塔に向かい、雨が止むのを待った
「ずっとあそこに一人でいたのか?」
「あのさ」
「ん?」
「カッコウって?」
「はい?」
「だからカッコウ」
「鳥のカッコウか?」
「うん、どんな鳥?」
「カッコウはモズの巣に卵を産むんだ」
「モズ」
「そして卵から孵ったカッコウのヒナはモズの卵を落とす、モズは明らかに大きなカッコウのヒナを育て続ける・・・みたいな感じだったかな」
「ヒナが卵を落とすの?」
「ああ、生きる為の本能かもな」
「モズが孵った時は?」
「そこまではわからないけど、ヒナでも落とすんじゃないのか?」
「絶対?」
「いやいや、生き残るやつもいるだろ?そうじゃなきゃモズは絶滅だ」
「そう」
和海はカッコウ
繭はモズ
その言葉には大切な意味があるのかも知れない
でも今はまだ何も見えて来ない
「お前さ」
「何?」
「体を大切にしろと言っただろ?」
「ああ、これ?」
「うるさく言うつもりはないけどそれはお前にとって必要な事なのか?自分を傷付ける事が」
「どうかな」
隠したつもりだったけどやはりバレたらしい
葵は勘がいいしね
「同じことをこれからも繰り返すのか?」
「だったら・・・」
「だったら?」
「葵が俺を傷付けて」
「それは出来ない、お前は親友だから」
「だね」
親友
俺達はそれ以上でも以下でもない
親友と言う言葉だけでずっと俺達は傍にいる
そんな言葉だけで・・・
「そうそう、お前のルームメイトの繭」
「繭?」
「俺のクラスなんだけど」
「へぇ、どんな感じ?」
「それがさ、自分からは話しかけないな」
「無視してるって事?」
「いや、話しかけられれば普通に会話はしているよ」
「そう」
「数学の小テストがあったんだけどあいつ3分でテスト用紙をふせてた、結果は満点」
「葵は?」
「俺はまぁ、いつも通りだ」
「80点」
「その通り」
「細かいミスが多いしね」
「それを言うなって!」
「問題をよく読まないから」
「その話は置いといて、その繭が3年に呼ばれてさ」
「うん」
「心配していたんだけどすごく満足そうな顔をして5限目に戻って来た」
「そう」
「何があったんだろうな」
「きっと美味しいものでも食べさせてもらったのかもね」
「冗談だろ」
満足してくれたんだ
よかった
・・・あれだけ食べればね
煙草に火をつけて葵の口に近付けた
「堂々と校則違反に巻き込むな」
「吸うくせに」
「まぁな」
壁にもたれて煙草をふかし、蜘蛛の巣の張った天井を見上げた
「止んだみたいだな」
「そうだね」
歯車の隙間から陽が差していた
通り雨だったのかな
「俺は部活に行くけどお前は?」
「帰る」
「わかった、じゃまた後でな」
「うん」
一人になった空間でぼんやり天井を見つめた
「部活ね」
そう言えば昔からバスケ部だったっけ
突き指とか考えないのかな?
プロのくせにホント笑える
俺もそう
怪我なら治ったためしがない
あの日からずっとね
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 169