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決着にしおりをはさみました!
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決着
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雨が降りそうだったけど、やはり降り出した
和海はうなだれたまま、雨に打たれていた
「可哀相な和海」
「・・・・・翔様」
「そんなにお金が大事なの?」
「・・・・・・・・・」
もう芝居は止めたんだ
俺の呼び方で気付いた
「冬矢もいない、遺産もない・・・これからどうするの?」
「翔様は知っていたのですか?」
「さっき知ったよ、そもそも知っていたらお前の父親だって俺に手出しは出来なかっただろ?」
「そうですね・・・きっと今までのバチが当たったのでしょう」
ねぇ和海
今だけは優しくしてあげるよ
今までにない程優しくね
「和海」
「本当に滑稽ですね」
「雨が本降りになる前に着替えた方がいい」
「翔様」
「学園に戻ろう」
「はい」
相当ショックだったみたい
まるで捨て犬みたいだよ
可哀想な和海
車を降りて、和海に言った
「和海、あの塔に行ってみない?」
「しかしあの塔は取り壊したはず」
「実は、同じものを俺が作ったんだ」
「翔様が?」
「だって、大切な場所だしね」
その意味は説明しなくてもわかっているよね
「・・・・・・・・・」
確かにあの塔は繭が取り壊した
でも俺がすぐに同じ塔を建てた
だって、とても大事な舞台になる場所だから
「過去の事はもう気にするなよ、和海」
「許して下さるのですか?」
塔の階段を一段ずつ登った
登る度に、今までの事を思い出していた
学園に来るまでは、辛い事の方が多かったかな
和海達にされた仕打ちは一生忘れない
そして、燕羽の事もね
「許す?・・・一応自覚はあるんだね」
「しかし今となっては私にはもう翔様しかいません」
「そうなんだ」
足音が響き渡る
もうすぐ塔のてっぺん
「漸く気付きました、お金より翔様の方が・・・」
話を遮るように大きな窓に近付いた
「見て、和海・・・ここからでも遠くの街の夜景が見えるよ」
「はい」
チラチラと揺れて見える夜景
さっきまで俺達はあそこに居た
「ドウブツCLUBとは上手く言ったものだね」
「それはどう言う」
「だってそうでしょ?この学園には動物しかいない」
「・・・・・・・・・」
「和海はウサギの飼育に忙しかったしね」
「それは」
「羊の皮を被った狼、棘を持ったハリネズミ、ずる賢い狐」
「何でもします、翔様・・・今までの事は」
「和海、そんな事はどうでもいいんだ」
「え?」
そう、今更どうでもいい
「俺ね、考えたんだ」
「考えた?」
「どうすれば和海を苦しめる事が出来るかって」
「殺せばいい」
「そうだよね、俺もそう思っていた」
「翔様に殺されるのなら本望です」
「どうしたの?和海らしくないね」
「そうですか・・・もう私にはなにもありませんので」
「でもね、殺すのは止めた」
「何故ですか?」
窓に座り、和海を手招きした
「一番和海が苦しむ事を思いついたから」
「えっ?」
大嫌いな奴にキスをした
「翔様」
嬉しそうな和海、そして可哀想な和海
燕羽、もうすぐだから
待っててね
「ここから燕羽は落ちて死んだ、愛していたのに・・・本当にお前達は人間じゃないよ」
「翔様」
「だから和海の一番大切な物を壊してあげるよ」
「翔様!いけません」
ポケットからナイフを取り出し、胸に深く突き刺した
迷いはなかった
「ぐっ・・・」
白いスーツに赤い薔薇が咲いたみたいで綺麗
きっと、今まで見た花の中で一番綺麗かも知れない
「翔様、やめて下さい」
「一生、俺を想い続けろよ」
そう言って、微笑みながら背中から下に落ちた
「翔様!!」
気を失うかと思ったけど、落ちた衝撃は相当な物だった
痛いな・・・・・すごく痛い
燕羽も同じ痛みだったんだよな
冷たい雨が顔に落ちる
景色が滲んで見える
和海が狂ったように俺の名前を呼んでいた
そんな和海を見ながら笑い、そっと目を閉じた
燕羽、待たせたな
これで漸くお前に会えるよ
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