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CAGE5:日常に潜む影39にしおりをはさみました!
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CAGE5:日常に潜む影39
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ドンッと重たく響いた音で目を覚ました。
何事かと上半身を起こせば、床に転がる直が居た。
「………何してるんだ?」
「あ……その、シャワーを浴びようと思ったんですが……」
「……が?」
「うっ…………腰が立たなくて………」
ああ、そう言えば昨晩は直が煽るあまり二回目に及んだのはいいが、途中で直が気絶したんだった。
「……激しかったか?」
「うっ………はぃ。」
「ふっ、仕方ないな。」
ベッドから下りて床に座ったままの直の身体を抱え上げる。
「わっ!?もう、また……」
「……一緒に浴びよう、洗ってやる。」
「じ、自分でやります…」
「…今更恥ずかしがっても無駄だ。昨晩も風呂に入れたからな。」
「うぅ…もう僕、自分が情けないです。」
「……俺は満足してる。」
顔を覗き込んでそう言えば、渋々と直はそれなら良いですと口にした。
「……あとで事務所に行く。昨日の報告がまだだ。」
「あ、それなら僕も行きたいです。上月さんに改めてお礼を言いたいので。」
「……ん。」
シャワーを浴びつつ直の身体を堪能していたら、すっかり逆上せた直が音を上げたので、隅々まで洗い上げて、入ったときと同じように身体を抱えて出る。
タオルで水気を拭いて、ドライヤーで髪を乾かす頃には恥ずかしそうにしていた直も心地良さそうに身を預けてきていた。
「気持ちいいです……洋さんの手って大きいですよね。頭に触れられると安心します。」
「……そうか?」
「はい。僕、頭撫でられるの好きです。」
気の緩みきった笑顔でそんな事を言うのは反則ではないだろうか。
「……直、もう一回抱かせ」
「ーーダメです。上月さんの所に行くんですから。Waitです、駄犬さん。」
「……アンタ、意外と根に持つよな。」
「ふふ、躾はしっかりしないと痛い目見るって学習しましたからね。」
髪が乾いたことを確認して手を止め、次は自分の準備に取り掛かる。
程なくして準備を終えると俺達は家を出た。
「うぅ、寒いですね。」
「…そうだな。」
「今夜は鍋、鍋にしましょう。」
「……ああ、いいな。」
「あ、でもおでんも捨てがたいですね。」
暖かなメニューを吐き出す吐息は白い。
「……何でもいい。アンタが作ったものなら。」
「ふふ、良いこと言ってくれますね。」
愛を語り合っている訳ではないのに、こんなやり取りが心を満たしていく。
「……どうしたんですか?」
「……ん?」
「凄く穏やかに笑っていたから。」
「……そうか、無意識だった。」
「ふふ、良い顔してましたよ。」
「……そりゃどうも。」
多くを望んだわけではなかった。
細やかで良かったのだ。
求めた幸せの形は。
「あ、着きましたよ。」
相も変わらず古びたビルを見上げる。
階段を上がり始めた俺の後ろを直がついてくる。
上がりきってすぐに踵を返し、振り向くと驚いた顔が俺を凝視した。
それから間を入れずに触れるだけのキスをする。
「……愛してる。」
「……ぇ……なっーー!?」
本心半分、悪戯心半分だ。
それからすぐに事務所のドアの方へ向き直すと、もう!と悪態をつく声が後ろから聞こえた。
事務所のドアを開けて、いつもの何を考えているか分からない笑顔が出迎えてくるかと思いきや、予想は大きく外れた。
上月はいつものようにデスクに座っているものの、俺達の姿を見て頭を抱えた。
もう一つ気になったのは俺達に背を向けるように立っていた青年だ。
背格好からして葉桜ではないことは分かる。
「間が悪いなぁ…。」
そう上月が呟くと、青年がゆっくりとこちらに振り返った。
ふわふわとした栗色の髪は全体を柔らかな印象にしている。
目は伏せがちだが顔は綺麗だ。気だるげなイメージを持ってしまうが、儚さも感じる。
……なんだ、この雰囲気?この感じ……。
青年は俺達の姿を視界に入れると、歩みより近くで俺を見つめた。
「倉橋 洋さん……」
「?」
俺を知るらしい青年は何の感情もないような目をしていた。
やっぱり、何処と無く直に似ている……。
明確な何かと言われれば説明が出来ないが、醸し出す雰囲気が直に似ている。
隣に立っていた直も首を傾げ、俺を見た。
大方、知り合いなのかと訊きたいんだろうが、俺には心当たりのない人物だ。
青年の次なるアクションを待っていたら、突然小さな衝撃がぶつかった。
両手を広げた青年の身体が俺に抱きついたのだと理解するのに数秒。
「……おい、離せ。」
「倉橋 洋さん、僕のこと抱いてください。」
聞き間違いかと思ったが、残念ながら隣から驚きの声が聞こえたので間違いではないらしい。
「……冗談は止めろ。そんなに暇じゃない。」
「貴方のことが好きなんです、だから僕を抱いてください。」
抑揚のない声は意外にも煩く事務所に響き、俺達の思考を充分に停止させた。
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