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後日話。hello, my houseにしおりをはさみました!
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後日話。hello, my house
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「先生を呼んできて!」
「はい!」
「勇太…っ、おい勇太──!!」
──────────────────
「…………」
目覚めの悪い朝……いや、昼過ぎだった。
気怠い体を起こし、ボーッとする頭で時計を見ればもう13時を回っていた。
「…………っヤバい!!」
完全に寝過ごした事を理解した俺はベッドから飛び起きた。
今日は待ちに待った日だというのに、こんな日に限って眠ってしまうなんて…。
そう後悔の念を抱いたまま、俺はとにかく目的の場所へ車を飛ばした。
「あ、御崎さん」
「悪い!寝坊した…」
「もう…。1時間近く遅れてるから、何かあったのかと思って電話しようとしてたんだよ?」
駆け込んだ病室の主は怒るわけでもなくそう言って安堵の表情を浮かべた。
時間を守らなかった事を責めたりせずに相手の無事に安心する。
こいつのこういうとこは見習うべき美点だと思う。
だが捻くれた俺はこいつのように素直になるなんて出来ず、ついイタズラ心を疼かせる。
「なんだ、心配してくれたのか?」
「!べ、別に心配なんか…」
「嘘だな。心配で心配でたまらなかったって顔してるぜ?」
「っ、してない!」
「してるって」
「~~、なんで御崎さんっていっつもそうなんだよ!ほんとムカつく!」
こいつがムッとした表情でそっぽを向いて俺はやっと満足する。
そんな性格だからいつこいつに嫌われても不思議じゃねえって自負してるが、一方でこいつは俺から離れないという自信もあったせいで毎回からかっちまう。
でも心配ない。
「そんなに怒んなって。お前が可愛い事言うからだろ?」
「なっ…!」
不機嫌な肩を抱き寄せて額にキスをすれば、こいつは顔を赤くして悔しそうに俺を睨み付ける。
そんな表情すら愛おしく感じるんだから、俺は相当こいつに惚れてんだろう。
「退院許可は?」
「もう貰ってる。後は入院代を払って病院を出るだけだけど…………御崎さん、本当にごめん。ちゃんと返すから」
「あ?まだ言ってんのか。俺が望んで勝手にやってる事だ、気にすんな」
「ダメだって!こういう事はちゃんとしとかないと」
「固いねえ、若いのに」
「あ。今の台詞オジサンくさい」
「…………」
こんな他愛もないやり取りすら、数ヶ月前までは絶望的だった。
骨髄移植を終えた勇太は無菌室に入り、面会もままならない状態が暫く続いた。
そして何度も危険な状態に陥り、その度に俺や勇太の家族は最悪の結果を覚悟しなけりゃならなかった。
その時の事は1年経った今でも時々夢にまで見る。
「──ねぇ、御崎さんってば!」
「…!わりぃ、なんだ?」
「だから信号!青だよ?」
「あ、あぁ。そうだな」
病院を後にした俺達は、これから二人で暮らすマンションに向かっていた。
その道中、ハンドルを握る俺の脳裏にまた過去の記憶がぼんやりと甦る。
そのほとんどが移植後、こいつがしばらく入っていた無菌室での記憶だった。
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