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友達から始めましょうか? 9(創side)にしおりをはさみました!
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友達から始めましょうか? 9(創side)
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『なぁー、スッゲー今更なんだけどさ、名前教えてくんね?』
『名前、ですか?』
『おー、ええよー!ウチは海。日島 海(ひしま かい)や。ほんでコッチのおぼっちゃまがかえっちー』
『松橋 楓(まつはし かえで)と申します』
日島海、この人にピッタリな名前だ。
太陽のように明るくて、海のように広い心を持っている。その人懐っこい笑顔は誰もを受け入れてしまうような、そんな気さえしてくるのだ。
そして、松橋楓。古風で上品で、やはりこの人のためにあるような響きを持つその名前はすぐに覚えることができるだろう。呼び名は"かえっちー"だそうだ。
そこは少し楓の印象とは違っていてまた面白い。
丁度全員が走り終わる。前半よりもだいぶと時間がかかったのは、歩いているのか走っているのかよくわからないスピードを保っていた聖夜が後半に居たからだろう。
だが聖夜は決してふざけているわけさではないことはこの表情からわかる。今にも倒れてしまいそうだ。
オン眉とメガネに支えてもらいながらこちらに向かってくる。本当なら駆け寄って『よく頑張ったな』って頭を撫でてあげたいのだけれど、自分にその役目を果たすことはできない。
何故ならもう海がやっているからだ。
立ち上がって聖夜の元に駆け寄った海がその大きな手で聖夜の頭を意外にも丁寧に撫でて、そして『よー頑張ったなぁ〜』と言って。楓が『3人ともお疲れ様です』と笑う。
もうそこに輪ができてしまっていて入る余地はない。仲良いんだなぁ〜、なんてずっとクラスメイトから離れていた俺が思うくらいなのだ、かなり仲は良いのだろう。
立ち上がってグーッと伸びをして。尻についた砂埃をササっと払えば後者の方に向かって歩き出す。
授業は受けたんだ、もう帰っても良いだろう。
皆が整列を始めていることは知っているけれど、今更居ても居なくても同じような存在が1人消えたところで誰も気にも留めない。
去年のクラスも今年のクラスも友達と離れてしまって、新しい友達もできなくて、だからまたこうして逃げてしまうのだ。
大きなあくびが出てしまう。こんなにも暖かくて気持ちが良い日は眠たくなってしまうのだ。
それに、日頃から昼寝をしているせいでもう昼間に眠ることが癖になってしまっているのだろう。
自分では変わらないとダメだと分かっているのに変えられないのは今があまりにも心地よくて甘えてしまっているからだ。
変わりたいと思っているのに変われないのは、変わるきっかけが無いからだ。
こんな俺のことなんて誰も気に留めなくて当たり前。努力も何もしていないのに誰かが助けてくれるなんて都合の良いことは無い。
無い、はずだったのに。
『鈴野くんっ!』
名前を呼ばれて立ち止まって、振り返ればそこにいつものあの眩しい笑顔を向けてくる聖夜が居て。もう息が整ったらしい聖夜が『整列は向こうだよ?』と知っていることを教えてくれる。
『ほら、早く行かないと皆んな待ってるよ!』
『えっ?……あ…』
ウジウジしている俺の手をとってはズカズカと歩き出す聖夜。その頭をバカみたいな顔をして見ていたのだけれど、いつの間にかそのバカみたいな顔は笑顔に変わっていて、この天使を俺1人のものにしたい。他の誰にも渡したくないと、その気持ちはまた一層するのだった。
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