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歩いて転んでドキドキキャンプ!10(綾人side)にしおりをはさみました!
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歩いて転んでドキドキキャンプ!10(綾人side)
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1人は嫌いだ。嫌なことを思い出すから。怖くなるから。
だけど、1人は好きだ。だって、誰の目も誰の気持ちも気にしなくて良いから。
いつだって俺は人目を気にしなくてはいけない。だって、1人じゃないから。俺の周りにはいつも人がいるから。居てくれるから。
ありがたいけれど、時によってはありがたくない。それは今もそうだ。
こうしてわざわざお腹が痛いなんて嘘をついて1人になる。そうしないといけない理由があるから。そうしないと、皆んなに不快な思いをさせてしまうかもしれないから。
頭上にある風呂場への案内を確認しながら歩く。角を曲がって、するとそこに知った顔があった。大好きな友達。
お腹が痛いって言ったから心配してくれたらしい。
それにしてもまだ風呂に入っていたなんて、少し長めに入っていたんだな。疑問に思ったことを口に出せば、創と海が怒られていたんだと教えてくれた。
2人はこの数日でとても仲良くなった。その分よく楓に怒られているけど。そんな2人を見てクスッと笑ってしまうことなんてしょっちゅうだ。
鈴野創。名前は知っていたけれど、実際に彼のことを知ったのは最近だ。聖夜と仲が良いから、その流れで友達になった。別に嫌ではなかったからすぐに創がグループに入ることを許した。
それは良い判断だったと思う。だって創は想像していたよりも優しい人だったから。
今も優しい言葉をかけてくれる。一緒にお風呂に入ろうか、なんて。だけどそれは今の俺からしたら有難迷惑。
皆んなはキャンプファイアーを見ていて、なんて優しい言葉を断ってしまった。また、申し訳なくなる。優しさなんて、要らない。
優しくされるとどう返して良いかわからなくなってしまう。断ることはダメだと、優しさを仇で返すことはダメだと、深く深く考えてしまうから。うまく言葉を紡ぐことができなくなってしまうから。
いや、うまく喋ることができないのは昔からだ。どうしても吃ってしまうことがある。今は直そうとしているけれど、まだまだ練習が必要なようだ。
皆んなの背中を見送る。楽しそうだな。あの輪の中に聖夜がいないことが悲しい。俺たちのリーダー。いつだって聖夜は俺たちにとって特別な存在だ。
去年の四月、入学式からさらに数日が経った日。聖夜が話しかけてきてくれた。聖夜にとって俺は高校に入って初めて話しかけた人。そして俺にとって聖夜は高校に入って初めて話した同級生だった。
廊下に近い後ろの席に座っていた俺に話しかけてきた聖夜は今よりももう少し幼い顔立ちで、それから真新しい制服をキッチリと着ていた。ボタン、第1は外しても良いんだよ?と言えたのはこの時ではなく、もっと後だ。
『俺、花咲聖夜。田舎から出てきたから知り合いいないんだよね〜。よければ仲良くしてくれない?』
あまりにも明るい笑顔。良いこともないのに幸せだと、そう思っているかのような聖夜に寧ろ俺なんかが仲良くしてもらっても良いのかな?と謙遜してしまう。
それから休み時間のたびに俺の元に来てくれた。気づけば海がいて、楓がいて、若葉がいて、いつも5人で居るようになった。
1度『聖夜ちゃんは俺の親友だから』とキッカケは忘れたけれど言った覚えがある。流石に調子に乗りすぎたかと思ったけれど、皆んなが納得してくれたから嬉しくて、もっともっと聖夜のことが、みんなのことが好きになったんだ。
でも、まだ皆んなに言えていないことがある。それはこれから言えるようになるのかと聞かれれば、分からない。
だけど、いつか話すことができれば良いとは思っている。
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