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雨宿りにしおりをはさみました!
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雨宿り
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いよいよ本降りになってきた雨。静かにする
事を認めないと言うようにザーザーと音を立ててアスファルトを叩く。
「あのさ、僕最初から"サエキ"さんの事嫌ってないからね。」
沈黙を遮ったのは他でもない、僕の声だった。
どうして、こんな事を言ったのか分からないけれど。何か言わないとこのまま"サエキ"くんが雨の中に溶けていきそうで。繋ぎ止める気持ちで言った。
俯いていた顔をゆっくりと上げる。その時の彼の顔は悲しそうとか、苦しそうとか簡単な言葉で言い表せるものではなくて。見ているこっちの心臓がギュッと締め付けられるような、複雑な表情をしていた。
「それは、知ってるよ。長く話しした訳じゃないけれど。」
と言うと、彼は真っ直ぐ僕を見つめた。瞳の美しい黒に僕は惹かれた。久しぶりに見た彼の瞳は驚くほど透き通っていて、不安に溢れたようだった。
「ミズキくん。もしも、僕は君が好きって言ったらどうする?」
「素直に嬉しいよ。」
「恋愛的な、性的な意味だったとしても?」
正直驚きはしなかった。
なんとなく予想は出来ていたし、ゲイではないけれど彼となら付き合っていけると思った。
「・・・うん。」
少し間を置いて答えた。"サエキ"くんは
「そっか、やった。」
と訳も聞かずにそっぽを向いてしまった。淡白な反応に恋愛なんてこんなものか、と思って彼の方を見ると耳や首まで真っ赤に染まっているのが見えた。
案外可愛いところがあるんだなと言ってしまえば悪いかよなんて返される。たぶん、こんな感じのゆっくりとした時間はこれから続いていくのだろう。
雨がまだ上がらない古びたバス停の中は暖かい雰囲気が漂っていた。
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