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箒に乗った俺達はユーリの住む街の手前で地上に降り立った。
まだ陽が高く、街中に降りるには目立ち過ぎるからだ。
「スバル」
「…………」
ユーリの呼びかけに視線を返すと彼は何か言い掛けて"何でもない"と口を噤む。
普段なら聞き出すところたが、今の俺にはそんな彼の様子を気にする余裕なんてなかった。
「行こう」
「……うん」
先に歩き出したユーリの背中を目にしながら少し後ろをついて歩く。
すると彼は時々横目で振り返って俺がちゃんと付いて来てるかを確かめる。
その行為に逃げると思われているのかもしれないと感じた。
でもなぜそう思うのか彼の考えは分からない。
「ただいま姉貴」
「あ、お帰り────スバル君!?」
「お邪魔…します」
店に入るとユーリのお姉さんが意外そうな面持ちで俺を迎えてくれた。
多分薬を作ろうとしてたんだろう。
お姉さんは手に薬草か何かを持ちながらユーリに耳打ちをした。
「あんたどうやって連れてきたのよ?」
「彼がこっちを選んだんだよ」
「へぇ…、ならいいけど」
こっちって…ユーリに付いてきた事?
だったら他に選択肢があったのか…?
少し考れば、それがブラッド方だとすぐに分かった。
けどそれは決して選べない選択肢で、俺にとってはあって無いような物だ。
「スバル、こっちにおいで」
手招きで俺を呼ぶユーリに黙ってついて行くと、前とは違う部屋に通された。
何か不思議な物がたくさん飾られている室内を見渡していると、彼はその一つを手に取る。
「面白いでしょ?君はここに入った二人目の人間だよ」
「二人目…?」
「うん。俺、他人っていまいち信用できなくてさ。だから君が二人目」
そう言ったユーリの笑顔は何となく寂しそうだった。
この部屋は恐らくユーリの自室だ。
棚に飾られた不思議な色の置物や面白い形をした何かの模型。
取り止めのないこの部屋の雰囲気は彼を物語っている。
「一人目は…どんな人?」
他人を信用しない彼が俺をここに招き入れたという事はそれなりに警戒心を解いてるってことなんだと思う。
だったら一人目は?
彼の表情は鬱ぎ込む俺が気になるのに十分過ぎる程の切なさを漂わせていた。
「俺より一つ年上の女。もう死んじゃったけど」
「!病気…?」
「……いいや。俺が殺した」
「っ!?」
「裏切ったから……始末した。掟には逆らえない」
感情を押し殺したユーリの目は虚ろに俺を見つめ、縋り付くように腕が伸ばした。
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