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溢れた涙は少し止めるのに苦労したが、このままなし崩しに号泣してしまう、なんて真島のようなことはなかった。
だがヒビヤンに涙を見られてしまったのはめちゃくちゃ気まずい。
とはいえあそこで連れ出して貰えなかったら、そっちの方がマジで笑えなかったが。
「別に我慢しなくていいのに」
「するに決まってんだろ」
冷たい夜風に当たりながら、ずずっと鼻を啜る。
冷静になるとクソ恥ずかしい。
俺が泣くとかありえないというか、ヒビヤンだって顔には出してないがきっとビックリだっただろう。
それでも真島の前じゃなくて良かったと、それだけは心底思う。
少し落ち着いてきたところで、俺はヒビヤンに今の俺と真島の現状をぽつりぽつりと話した。
別に聞かれてはいなかったが、ここまでさせておいて何も話さないのは悪い気がした。
今更泣いた手前、真島で遊んでるだけなどと貞男に説明した時のような事は言えるはずもなく、ちゃんと全てを話した。
「…つらっ。お前ら何してんの」
話し終えたら、とりあえず一言そう言われた。
とても客観的な感想をありがとう。
「俺もマジで何してんだろうと思うわ。というかどうしてこうなった。俺の女の子との青春の日々はどこ行ったよ」
「そもそも女子とはヤリたいだけで青春もクソもなかっただろ」
ズバッと言われた。
ヒビヤンは考えるように手摺りに頬杖を付くと、真面目な顔で口を開く。
「別にいいんじゃねーの。飽きるまで一緒にいたら」
「…飽きなかったらどうすんだよ。男同士だぞ俺ら」
「そこに関しては俺も軽はずみなことは言えねーけどさ。…けどお前、恋愛なんて一時的な感情だとか悟り開いてんのか?」
「開いてるよ」
当たり前だろ。
どんなにつらくたって、時間さえ経てば気持ちは軽くなっていくはずだ。
真島だって最初はつらいと思っても、何年もしたらきっと俺に対しての感情なんてなくなるだろう。
「俺はそうは思わねーけど」
「まさかヒビヤンが乙女思考だったとは」
「そうじゃねーよ。ただ、まだ分かりもしない先の事を勝手な先入観で決めつけるのはどうかと思っただけだ」
茶化したのに、返ってきたのは驚くほど真面目な台詞だった。
思わず押し黙る。
「…まあ高瀬の気持ちも分からないことはねーけどさ」
そう言って頭を撫でられた。
いつもの俺なら速攻跳ね除けてるが、精神的にやられている今それをされると、胸がじんわりと熱くなる。
まさかヒビヤンにここまでガチで慰められようとは。
妙な気恥ずかしさに目を滑らせたら、ここにきてようやくヒビヤンはいつものように笑った。
「昨日のお返しな。お前も昨日俺の事慰めてくれただろ」
「え、昨日のアレ俺は慰めてた内にはいるのか?」
「おー。でもなんか高瀬の話聞いてたら、俺の悩みなんかどうでもよくなってきたわ」
「ヒビヤンのほうが俺らよりよっぽど長く付き合ってるくせに、何言ってんだよ」
そう言ったらヒビヤンは俺から手を話して、どこか困ったように眉を落として表情を緩める。
同い年なはずなのに、なんだかその表情が大人びて見えた。
「…俺の場合はもう自分の気持ちが離れてるからな。それでも長く一緒にいた分心痛むけどさ。でもお前の場合は違うだろ」
ヒビヤンの言葉に顔を俯かせる。
落ち着いたはずなのに、また泣きたくなりそうでぐっと腹に力を込める。
「まあ俺はどっちを選んでも、お前に正解だって言ってやるよ」
――だから明日の昼飯は奢れよな、とニッコリスマイルで続けたヒビヤンに腹パンを食らわせる。
なんだか少しスッキリした。
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