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序章
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母は美しかった。
千人の女を集めたら、九百九十九人の女を差し置いて愛される、それだけの女人だった。
ある御仁の側室となり、おのこ三人産んで、ことごとく美童に育てた。
だがある御仁、ある時蜂起し、潰走し、鎮圧され、はたち少うしすぎたばかりの身で、母は未亡人となった。
その身は戦の敵方に捕えられた。
花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき。
この文は吾よりもっともっとあとの時代の女人の書き手のものだそうだが、このとき母はそう思わず、恐れも怯えもしなかったようだ。
こともあろうに母は、父の仇の前に進み出で、風情だけでその男を耽溺させた。
その男の名は平清盛。
当時平氏の頭領だった…
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