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7話(1/5)にしおりをはさみました!
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7話(1/5)
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授業終了のチャイムが鳴ったにも関わらず千尋は未だに教科書と睨めっこをしていた。
どう頭を捻らせても答えが出てこない。
これといって苦手な教科は無いが、どうも数学とはあまり相性がよくないらしい。
「なにお前、そんなのも分かんねーの?」
欠伸交じりの声と共に、ひょいっと横から教科書を奪われる。
「返せよ流!」
「あー……これな。簡単じゃん、ちょっと貸してみろよ」
そう言って流は持っていたシャーペンまでも奪い、さらさらとペン先を教科書に滑らせる。
「ほらよ」とものの数秒で返された教科書には綺麗な字で式が書き込まれ答えまで書かれていた。
しかもご丁寧に解説付きで。
「え、なにこれ!つーかこれ先生が言ってた事より分かりやすいんだけど」
「だから簡単って言っただろ」
「いやこれ簡単じゃねーし……つーかお前今の授業寝てた癖になんで解けるわけ?」
授業開始と共に机に突っ伏して爆睡をしていたのだから分かる筈がない。
いや、真面目に聞いていても分からない事もあるけれど。
「それは流が学内トップだからだよ」
「白谷……」
いつの間にか二人の後ろに立っていた白谷が何処か自慢げに言うと、流の目つきがキツいものに変わる。
それを微動だにせず睨み返す白谷。
「なに勝手にしゃしゃり出て来てんだよ」
「でも本当の事だろ?頭だけはいいってさ」
「だけって何だよ、だけって」
今にも喧嘩が勃発しそうな勢いの中、千尋の高揚とした声が響く。
「トップ!?あんなに授業中寝てばっかの癖になんで!?」
「なんでって言われても」
「いいなー…それで成績トップとか羨ましいぜ」
だからいつも寝ているのかと妙に納得も出来る。
出来るなら授業なんて面倒だし出なくて済むならそうしたい。
「千尋はそう思うんだ」
「へ?なんで?だってそうじゃん、白谷はそうは思わないの?」
首を傾げると白谷は「いや……」と言葉を濁し、それ以上は何も語らなかった。
流に視線を戻すと、どうしたことか顔を手で覆い隠し俯いている。
「どうした……?」
「なんでもねーよ」
「……あ、腹減ったんなら飴あるけど食う?」
ポケットから今朝、林さんから貰ったばかりの飴を取り出す。
飴ごときで空腹が満たされるわけではないが、何も食べないよりは少しでも腹の足しにはなる。
「じゃ、もらっとく」
「どっちがいい?オレ苺ー」
「ちょ!俺の選択肢ねーじゃん」
「だって流金髪だしレモンとお揃いでいいじゃん」
「いや意味分かんねーし」
その光景を側で見つめる白谷はすっかり自分の存在を忘れられてしまったようで、「仲いいんだな」とつまらなそうに呟いて教室から出て行った。
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