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2話(1/4)にしおりをはさみました!
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2話(1/4)
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ハァーと息を吐けば白くなる、そんな寒い空の下で一人立ち尽くしていた千尋の手からスルリと紙が地面に降り立つ。
受験票。
今となってはただの紙切れに成り果てているが。
無かったのだ。
目の前の掲示板にでかでかと貼られた発表用紙に千尋の受験票と同じ番号は何処にも。
試験を受ける前から結果なんて見えていたが諦めたくなくてテストに挑んだ。
遊ぶ時間も寝る時間も勉強の為に使って、とにかく受験に受かる為に猛勉強した成果としてかテストは簡単に解けた。
内申だって面接だって悪くない自信がある。
普通ならこれだけで充分合格で、奨学金だって何の問題もなく受けれていただろう。
むしろ奨学金が出るからこの学校を受験したようなものだ。
「くそっ……」
悔しくて、涙が滲む。
原因があるとすなら、一つしか見当たらない。
遅刻した理由に「電車に乗り遅れた」なんて、どうせ寝坊したんじゃないかという見え透いた嘘にしか聞こえなかったのかもしれない。
……本当の事でも誰が途中で電車を降りてトイレで自慰をしていました、なんて言えるか。
試験当日に遅刻さえしなければ今頃は花の高校生活を夢見ていられたのに。
千尋の口から再び重たい溜息が零れると同時に心臓を握り占められたように強く鼓動を打ち始めた。
また発作だ。
どうしてこうもタイミングが悪いのだろう。
しかしそうは言っていられない。
この発作は自慰をしなければ治まらない、既に身体は快楽を求め疼き出している。
ここはまだ高校の敷地内。
トイレなら言えば普通に行かして貰えそうだが、試験に落ちた学校の中に入るのは何だか気が引ける。
公衆トイレは汚れていそうだしコンビニのトイレは長くは入っていられない。
駅までは歩いて10分。
それまで我慢するしかない。
深く深呼吸をして千尋は平然とした態度を装って歩き出す。
「――斎藤千尋…、君かな?」
突如、名前を呼ばれ千尋は反射的に振り返った。
シックな黒のロングコートに身を包み、皺一つないスーツにサングラスを掛けた、いかにも育ちが良さそうな男。
きっと全てブランド物に違いない。
その手には千尋の受験票。
そういえば落としたままだった。
君のだろ、ってサングラスを外して微笑む男に若干の劣等感を覚える。
キザだ。
絶対にこいつキザだ。
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