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5にしおりをはさみました!
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子供のようにはしゃぐ日向の声を聞きながら、白い煙がゆらゆらと空に登っていくのをぼんやりと眺めていた。
「ほら月島!突っ立ってないでお前もやれよ!な?」
別にいいのに、日向が無理矢理僕の手に花火を握らせる。
派手なものは日向の担当なのか、渡されたのは線香花火の束だった。
さっさと終わらせて帰ろう。
そう思い、一本を引き抜いて蝋燭の火に近づけた。
ジュッと火薬が焼ける音がする。
丸い火の玉から徐々にパチパチと火花が散って。
綺麗だと思った途端に地面に落ちていった。
「俺にも一本くれよ」
焼け焦げた黒い塊を、虚しいような切ないような気持ちで見つめていると、頭上から声がした。
ああ、まただ。
この声を聞くたびに、僕の鼓動はいちいち速くなる。
そして、必死に普段通りの僕を装わなくちゃいけなくなるんだ。
「どーぞ。てゆーか僕そろそろ戻るんで」
線香花火の束を黒尾さんに差し出す。
黒尾さんは少しだけ考え込むような顔をして、僕の手から花火を取った。
そして、束ごと火をつけてしまう。
「…え?」
花火は一気に燃え上がり、綺麗だと感じる暇もないくらいの速さで地面に焦げ落ちた。
「チビちゃん!ちょっとツッキー借りるわ!」
「……?ういっす」
きょとんとする日向。
多分僕も日向と同じような顔をしているんだと思う。
思考停止状態の僕だったけど、黒尾さんに掴まれた左腕の熱さだけはしっかりと感じていた。
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