アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
俺と告白-1にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
俺と告白-1
-
「実は、ずっと好きでした!」
俺の目の前にはキュッと瞼を閉じ、桜色に頬を染めた小綺麗な青年が、かたく握った拳を震わせながら立っている。
夏休みを目前に控えた灼熱の太陽の下で、まさかの告白を受けているのだ。
「あー。えーっと。罰ゲームかなんかかー?」
俺の間延びした言葉を聞いて目を開くと、今度は泣きそうな顔をしながら音でも鳴りそうな勢いで首を横に振っている。
制服の第一ボタンまできっちり留めたその青年は、サラサラの黒髪に天使の輪が光り、ニキビ一つないキメ細やかな肌をして、形の良い奥ぶたえに筋の通った高い鼻をしている。
清潔感があり気持ちがいいくらい背筋が伸びていて、ノンフレームの眼鏡が理知的な雰囲気を醸し出していた。
「その、いきなり好きと言われてもな。お前の名前も知らねえぞ?」
はっとした青年は恥ずかしそうに俯くと、意を決したように顔を上げ自己紹介を始めた。真面目だな。
彼の名前は月島直斗(つきしまなおと)、中等部からの持ち上がりで水泳部に所属している。身長178cm、体重62kg。血液型はB型で趣味が遠泳と読書。
「……そこまで詳しくは聞いてねえんだけどな」
「うっ」
再び顔を染めてワタワタしているところが素直に可愛いと思った。
何度も図書室で相席をしていたらしく、俺の選ぶ本が全て好みだと気付いた頃から気になって見ていたらしい。
「僕たちきっと趣味が合うと思うんだ。突然で驚いたと思うけど、試しに付き合って下さい。好きです」
びっくりである。
俺は公立の中学に通っていた頃、そこそこ人気はあったが告白されたことは一度も無かった。俺を好きになる物好きなんて変態の百瀬だけだと思っていたのだが、こんなに真面目そうな男に好かれるとは思ってもみなかった。
「ありがとう?……疑問形は変だな。えっと、ちゃんとありがとう。でも俺こんなだけど、付き合ってるやつがいるんだよ。だからごめんな」
見るからに好青年なんだから俺なんか忘れて新たなる恋に胸踊らせるが良い。
「友達なら!……友達ならなってくれるかな?」
うっはーー。なんて可愛いことを言ってくれるんだよ。少し顎を引いて極自然な上目遣いで切なげに俺を見つめると、ゆっくり瞼を瞬かせた。艶やかなまつ毛が長くて色っぽいなんてずるいだろ。小悪魔か。
「俺つまんないぞ?隠れ腐男子だし、趣味が合うとは思えないんだが」
なんとか目を覚まさせようと試みたが逆効果だったようで、腐男子という言葉にキラリと目が光った。月島も同じ穴のムジナだったのか。
「ほらやっぱり。僕たち趣味が合うじゃないか」
さらに共通点を見つけた月島は、素直に喜んでいるのが分かるほど零れそうな笑顔で俺を見つめてくる。
ーー別に浮気じゃねえしな。
「言っておくが、お前を恋愛対象にはできないからな。今後そういう意味で好きになることはない。それでも良いなら友達くらいなってやる」
かなり上からな言葉にも喜んでくれるので、性格に難がある俺でも上手くやっていけそうだ。友達が増えることは俺だって嬉しいに決まっている。
と思っていたのだが……。
昼休みが終わり教室に戻った俺は、クラスの連中から避難めいた視線を浴びている。俺たちの告白劇は大勢に目撃されていたらしく、伝言ゲームの如く広められていたのだ。
どうやら月島はかなりの人気者だったようだ。俺は知らなかったのだが平泳ぎでは常に県内三位に入る実力者で、中等部の頃から活躍していたらしい。
「なんであの月島が、佐藤なんかを好きになるんだよ」
相変わらずやかましいチワワ男子が俺に文句を言ってくるのだが、それは俺が聞きたいくらいだぞ。考え込んでいたせいか黙りこくった俺の態度に更にチワワ達が激昴し始めた。朝丘と速水がすぐに止めてくれたのだが、クラスの騒ぎはなかなかおさまらなかった。
「友達ぐらい作ってもいいじゃねえかよ」
ぶつくさ呟く俺の声は、騒々しい連中の声に掻き消されてうんざりした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
86 / 96