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SS『おやすみなさい』にしおりをはさみました!
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SS『おやすみなさい』
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「母さんおやすみ」
写真の中で柔らかく微笑む母親の口元からは当然返事は帰ってこないわけで、脱ぎ散らかした服を押しやり薄汚れたタオルケットの中に潜り込んだ。
「親父……戻ってこねえかなぁ」
ポソりと呟いた声は虚しく広がる闇に溶け込んでいく。静かに刻む鼓動に耳を傾けると空腹を知らせる音が鳴った。
寂しくなんかないのに頬を伝う生温い感触が俺を弱気にさせるんだ。
明日は果たして生き延びることが出来るのだろうか……。
「……とう、さとう……佐藤!」
眩い光と共に百瀬の泣き顔が視界に入ってきた。
あぁ、夢か……で、何でお前が泣いてんだよ。
鈍い動作で腕を伸ばし百瀬の目元を拭ってやると、肌触りの良いやつの袖口で顔を撫でられた。そこに色の濃い部分を見つけて俺も泣いていたのだと分かる。
「お前ってお人好しだよな。百瀬、朝だけど……おやすみなさい」
「ふぇ?あ、あぁ、おやすみなさい?」
あの頃とは違うんだ。欲しい言葉は全て百瀬が返してくれる。
目尻に熱いものが溜まる感覚に苦笑いをして、やつの胸元へ顔を埋めた。
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