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56(アイツ)にしおりをはさみました!
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56(アイツ)
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最初 そのイトコは 姉妹で訪れた。
アタシの実家に行って 婆ちゃんからの綿入りハンテンを２人分届けてくれたのだった。
そのイトコ達は わりと近くに住んでいてアタシの父親の弟の子供達だった。
婆ちゃんにとっても孫だから ウエルカムで 生まれたときから 我が家同然に出入りしていた。
イトコ姉妹はアタシの一才上と一才下で 千春もしょっちゅう家に来ていたから そのイトコとアタシと千春はよく遊んだ記憶がある。
近所の子供も一緒に家の中でかくれんぼをしたり 畑で野菜をもぐ手伝いをしたり 庭でスイカ割りをしたり ビニールプールで遊んだり 冬は葉っぱを集めたり
それこそ昭和の時代を彷彿とさせるような 子供時代を過ごしたのだった。
そして
そのイトコが しょっちゅう千春に電話をしたり LINEをするようになっていた。
そして その発端となった
或日曜の昼下がり
千春が
｢おい 和美！婆ちゃんから電話。
茜と由衣が来るって！
婆ちゃんの作ったハンテン持って。｣
えっ！
茜と由衣っていうのはイトコで 特に仲良くしていたし 近所だったし 千春とも よく顔を合わせていたし。
そしてアタシが女になったことを何故か もう 知っていた。
茜がアタシや千春より一つ上。
結婚してこの近所に住んでいる筈。
由衣ってのは 一つ下で高校中退して、どっかの既婚者と駆け落ちして 挙げ句の果て子供産んで 男と別れてシングルマザーやっていたんじゃなかったかな？
今はどこかのスナックの雇われママをやっていたような。
えらく色っぽくて肉感的な ケバい女。スナックやる前はキャバクラに勤めているって言ってたか？由衣の娘もまだ中学卒業したばっかりなのに 家出を繰り返してるって 言ってなかったか？
とにかく
親戚の悪口は言いたくないけど あまり素行は良くなかったように思う。
そして
あの茜と由衣姉妹はアタシが 女になったことも 知っていた筈だ。
千春は
｢和美！どうする？嫌なら外出していいよ。俺一人で応対するから。あの２人でまくし立てられたら 和美は嫌な思いをするかもだろ？
いいよ出掛けて。適当に返事して追い返すから。｣
｢いや いいよ。アタシは平気。そんなつまんないことで アタシの決心は揺るがない。たぶん茜も由衣も アタシの女性化を知ってるから。だいたいアタシの親戚なんだから。千春が迷惑なら このマンションの外で待ち構えて 追い返すよ。｣
｢何言ってんだよ。俺もガキの頃散々遊んだもんよ。知らねぇ仲じゃねぇし。
あの由衣なんかはよ 小学校１年の頃 確かキスまでしたもんよ。かくれんぼしたときに。タンスの扉の中でさ。キスしよう って言われてさしたらしいぜ。
あんまよく覚えてねぇけど。
由衣に覚えてないの？ってこの前LINEで怒られちゃったモンよ。｣
はぁ？
由衣とLINEをしてるだぁ？
あの下半身ゆるゆる女と？
キスされただと？
今頃 それを話題にしてるだと？
あの女！次は千春を 狙ってるんじゃ無いだろうな！
アタシの兄貴にも 部屋に押し掛けて迫ったとか言ってたし！
そんなことを考えていたらピンポーン！
｢千春。アタシは平気。あの２人に会うわよ。茶くらいは淹れてやって。茶菓子は要らないから。｣
頷きながら千春は玄関に向かい
アタシはしばし 対策を 練ったのだった。
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