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エベールたちの牽制にしおりをはさみました!
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Vivre dans la révolution~革命に生きて
エベールたちの牽制
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「Voila」
(「はい」)
ジャン=クサヴィエはジャン=フランソワとギョームにお茶を用意した。生前のマリーが愛した菓子の一つクグロフを供している。
「メルシー」
ジャン=フランソワは早速、お茶を一口飲んだ。
「ディディエがイギリスへ・・・?」
「・・・精神をきたしたようだ。このままだと、最悪な事態を招きかねないだろう・・・。乗船券も今日、手にした。思いのほか、早く手配してくれたようだ。」
「そんなに悪かったのか・・・」
ジャン=フランソワは、ディディエに渡すための乗船券をギョームに見せた。
「・・・ディディエと離れ離れになるんだ・・・寂しい・・・」
ギョームも革命の波に翻弄されかけようとしている。
そう、「死」と隣り合わせといっていいだろう。
********
メンディー邸
ディディエの寝室に、ギョームが見舞いにやってきた。食べ物と花束を届けに。
丁度、ティエリからの診察を受けたところだ。
「・・・パリのことを一切忘れるといい・・・ただ・・・僕のことだけは絶対に忘れないで・・・」
「・・・勿論さ・・・」
二人は永遠の別れになるだろう、と覚悟をしていた。
国王一家没落して、共和制が敷かれたばかりのパリ。
ジャン=フランソワから手渡された乗船券を見たとき・・・
「・・・これ・・・文字がかすれているけど・・・?」
ジャン=フランソワはたしか、伝手を使ったはず。
「・・・そんなはずはないが・・・」
「デシャン先生?伝手ってどこを使われたんでしょうか?伝手とは言えど、いやに早すぎませんか・・・?」
正規の場所での発見手続きはかなり、時間はかかる。いやに早すぎる・・・
ティエリたちはそれに、引っかかっていた。
そんなとき、ジャン=クサヴィエが血相を変えてディディエのところに飛んできた。
「フランソワが手にしたのは偽造の乗船券なんだ!下手をすれば、致命傷になりかねない!依頼を受けた担当の販売員が有罪判決を受け、ギロチン送りになったんだ!」
「え!?」
「ヴァレンヌの駅長の息子ドルーエの知人の尋問で捕まったようだ!」
ドルーエはヴァレンヌ事件の立役者で、国王一家の逮捕に貢献。そして、歴史を動かした張本人。また、ジャコバン党支持者でもあった。ジャン=フランソワの伝手は王党派のため、確実に身元がばれたのである。
「・・・ドルーエの知人は・・・恐らく・・・ジャック・ルネ・エベールだろう・・・国王一家が裁判をかけられる前からずっと、監視を続けている・・・最近、クサヴィエの甥っ子のジャン=ルイがエベール一味に撲殺された・・・」
ジャン=ダヴィッドは今、タンプル塔に一人幽閉されている、という。
看守から容赦ない苛烈を超えた虐待を受け、ひたすら耐えている。
デシャン一族だけでなく、ディディエを徹底的にマークしているという現実。
ジャン=フランソワは声にならない。
大金を投じれば、確実に王党派であることがばれてしまう。
「兎に角、ここは、ぐっと我慢するしかない・・・今、ジャコバン党が台頭真っ只中。下手に動こうものなら、確実に命の保証はない。兎に角、ディディエの身を守るのことが先決だ。最悪の場合、最後の手段を使う」
最後の手段って・・・?何、それ・・・?
「デシャン先生、僕のことは心配しないでください・・・。僕は大丈夫です・・・」
他で、何かを見出そう、と思うも、精神がきたしている。
最早、絶望でしかない。産まれて来るんじゃなかった、生きる意味すら解らない。
その夜、ティエリはディディエの身体を拭いていた。
「週末までゆっくりと過ごそう。今後のことはゆっくりと考えるといい。父さんも解ってくれている」
ジャン=フランソワはニコラに話をつけていてくれていたようだ。
「メルシー、兄さん・・・」
*****
作者yunaより。
第二部の連載開始です。
精神をきたしたディディエ。
ギョームの父親ジャン=フランソワが手配したイギリス行きの乗船券は偽造。
エベール一味がディディエたちの周辺を容赦なく嗅ぎまわっています。
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