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妙なすれ違いにしおりをはさみました!
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妙なすれ違い
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「じゃあ、まずあれだ、大前提の約束をしておこう」
「?」
賢二郎を部屋に入れてまず一言、それを切り出した。
「絶対に話を投げ出さない、途中で逃げない、誤魔化さない、遮らない……だいたいこれがあればいいか。このよっつな」
「ああ、べつにいいけどどうしたんだ?」
「いや、変な誤解産みそうだろ? なら早いところそれは潰した方がいい」
「なるほど……」
恐らくこうでもしないと、俺が昨日見たことを話している間にぐちゃぐちゃになってしまうだろう。それがもし誤解だったら? これからもやっていく賢二郎と、ギクシャクした雰囲気で、というのはあまりに酷だし、バレーに影響が出たらどやされる。そんな長い期間チーム間に綻びがあったらだめだ。
「じゃあ、俺が賢二郎と瀬見さんが付き合ってると思った話だけど」
「うん」
「……昨日、お前が俺と離れていなくなったあと謝ろうと思ってお前の部屋まで行ったんだよ。まず一個ごめん、勝手に部屋入った」
「ああ、いいよ、全然」
すんなり許してくれるのは有り難かったが、心配になる。もしその調子で“そういう趣向”を持った男が部屋に入ってきたとして、賢二郎は断れるのだろうか。
「太一?」
「あ、悪い。えーと、あー、それで賢二郎いなかったから俺と顔会わせるの気まずくて銭湯行ったのかなと思ってさ。でも姿見えなくて不安だったから探しにいって、そしたら瀬見さんが賢二郎の頭撫でて、賢二郎顔赤かったし楽しそうだったし、なんだ付き合ってたんだーとおもって。……って感じ?」
途中気まずくなって下げた顔をあげると、賢二郎が少し縮こまっていた。小動物みたいで……あれ、なんだろうこの感じ。初めてハムスター家につれてきた感じだ。賢二郎。
「た、太一、顔、こわい」
「え」
不意に言われた言葉にぽかんとすると、賢二郎はホッとした顔になる。
「そんな怖かった?」
あまりの豹変ぶりに問い掛けると、控えめに頷いた。そこまでだったのだろうか。顔に力が入っていたようには思わなかったのだが。
「なんか、瀬見さんの名前出た辺りで……あ、終盤の方のな、いきなり何て言うか、雰囲気変わったって言うか」
「まじか……ええ、なんでだろ。別に男同士に抵抗あるわけでも無いんだけど……瀬見さんもいい先輩だと思ってるし……」
「あ、そ、そっか……」
どこか喜んでいるように感じた賢二郎の様子に、何故かぐずりと柔らかい部分を刺されたような気分になる。
これで嬉しそう、って、どう考えても瀬見さんが好きって言うことなんじゃないのか?
「……なー、瀬見さんと付き合ってなくても好きなんだろ? いいと思うよ、俺みたいにいきなり泣かせたりしないし」
「なっ……!! 別に瀬見さんが好きとか言ってないだろ。あのときは、その、太一の話で相談にのってもらってて……てか、その言い方じゃ太一が俺と付き合ってたみたいだな」
はは、と笑ったあと、賢二郎はハッとしたように目を反らす。いろいろとなんだ、聞きたいことが増えてる。まず俺の事で相談にのって貰ってたって、わざわざ銭湯行ってまで俺と仲直りするための案ひねり出そうとしてたの? あと俺と賢二郎が付き合ってたみたいって? どゆこと、え、なに、
「おれのことすきなの?」
「好きだよ……って、はぁ!? いきなりなにいってんだ!?」
殺されると思うれべるでバァン!! と机が叩かれた。怖い。痛そう。
え、てかいま好きって、言った? よな? どう言うこと?
「あっや、友達として!! な!! 別に、性的な目で見てる訳でもないし、って、いや、なにいってんだおれ、とにかく!! 太一はともだちとして好きだ!! そろそろ朝練だろ!!行くぞ!!」
「え、あ、お、おう」
怒濤のように流れてくる言葉を咀嚼できずそのまま賢二郎が移動の準備を終えてしまった。馬鹿みたいに早く終えた割には俺の事を待ってくれるようだ。
「俺も多分同じ感じで賢二郎好きだわ」
「返事とか要らねぇから!!」
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