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黒い影 2にしおりをはさみました!
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黒い影 2
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僕は、素直に男の人の手を取って、立たせてもらう。
男の人は、僕の服をはたいてくれて、もう一度、謝った。
「怪我はないか?すまないな、よく見てなかった」
「いえ…、僕もよそ見をしてたので。すいません…」
「大丈夫そうだな。じゃあな、色々と気をつけるがいい」
「はい…」
男の人は、フッと口元に笑みを浮かべると、颯爽と去って行った。
ーー今の人、僕ら四家とは違う…人狼だ。
遠く向こうを歩く、豆粒ほどの大きさになった背中を見て思う。きっと彼も、僕が人狼と気づいただろう。だけど特に詮索もしないでいてくれたことに、ホッと安堵した。
いつもは車で通る道のりを、ゆっくりと歩いて帰る。ロウに車に乗せられる度に、「歩いて帰るから送らなくてもいいのに」と文句を言ってたけど、夏に近づいて暑くなってきた今日などは、やっぱり車がいい。
家に着いたらすぐにクーラーを入れて、シャワーで汗を流そうと思い、少し足を速めた。
やっと家の門が見えて、ふぅ…と息を吐いたその時、門の前に一台の黒い車が停まって、中からスーツ姿の上品な男が降りてきた。
僕は、その人物を見て動きを止める。僕の口から、絞り出すように、掠れた声が漏れた。
「…父さん…」
僕の気配に気づいて、父さんが振り向く。父さんは、顔色一つ、表情一つ変えないで、僕を見て言った。
「ロウはいるのか?」
僕のことなど気にもかけない様子に、もう慣れた筈なのに胸がチクリと痛む。僕は父さんの視線から目を逸らして俯くと、小さく声を出した。
「ロウは…まだ学校です。今日は遅いと思います…」
「そうか。なら、今日は帰ろう。また来る」
それだけ言うと、颯爽と車に乗り込み、行ってしまった。
僕は、急いで門の中に入り、鞄から鍵を出そうとする。だけど手が震えて上手く掴めない。やっと掴んだ鍵で震えながら玄関を開けて、家の中へ駆け込む。そして、鞄を放り投げてトイレに入り、便器にしがみついて何度も吐いた。
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